
むしゃなび編集部
小さな島で大発見!「有珠モシリ遺跡」発掘調査の話。
有珠湾に浮かぶ小さな緑の島、「有珠モシリ遺跡」。
この夏世界遺産に登録された北黄金貝塚と並んで伊達市を代表する遺跡のひとつです。
8月下旬まで、だて歴史文化ミュージアムで出土品などを展示する企画展が開催されています。
「有珠モシリ遺跡」は1978年に発見され、これまでに2度の発掘調査が行われています。
最初の調査は1985年~89年に札幌医科大学により行われ、約2000年前(続縄文時代)の貝塚やお墓が発見され、中でも「イモガイ」という貝でできたブレスレットが見つかったことで、全国的な注目を集めました。「イモガイ」は九州・沖縄付近の海でしか採取できない貝であることから、この時代に遠く離れた南方の地域との交流・物流があったことを伝える考古学上の大発見となったのです。2004年には国の重要文化財に指定されました。

その後、最初の調査から約30年の時を経て、東北芸術工科大学(山形県)と伊達市噴火湾文化研究所の共同による発掘調査が2018年から現在まで行われています。
昨年2020年9月の調査では、11体もの人骨が埋葬されたお墓が発掘され、大きなニュースとなりました。

2020年9月の現地報告会の様子です。
こちらが発掘されたお墓です。

「再葬墓」という、一度埋葬した人の骨を掘り出して埋葬し直したお墓で、北海道では初の発見となりました。親族など一緒に亡くなった人が一緒のお墓に埋葬される「合葬墓」というのはよくあるそうですが、「再葬墓」については例も少なく、規模からして全国的にも珍しい事例だということです。
現代では想像もつかない不思議な風習ですが、その意味や、目的については謎に包まれた部分が多いそうです。

赤い粉のようなものは「ベンガラ」という染料。その上に白い海砂、さらにその上には赤くて平たい大きな石が置かれていたのだとか。それぞれに何らかの大切な意味があり、丁重に弔いをしたことが推測できるそうです。

ヤジリのようなものからナイフのようなものまで、さまざまな出土品がありました。
中央の丸いものは耳飾りだということですが・・・大きさもあり、石でできていて結構重かったです。耳に穴を開けて身につけるようですが、本当に入るの??と、びっくり。

報告会では供養のため、お経があげられました。

発掘調査団の皆さん。東北芸術工科大学・青野准教授、永谷さん、学生の皆さん(2020年9月撮影)
実はこのお墓は、札幌医大の調査時に、その一部が発見されていました。
伊達市の学芸員で2019年から発掘調査団メンバーとして調査に携わっている永谷幸人さんに伺いました。

永谷さん「札幌医大の発掘調査の時に2体分の頭の骨が見えていたのですが、調査期間等の兼ね合いがあり、これは大事な遺跡だから将来に期待して今は保存しておこうということで一度埋め戻されたという経緯がありました。
今回、あらためて調査するにあたって、この30年間で科学的な分析も進化しているので、新しい科学の目でもう一度発掘調査をしてみようという事で掘ってみたら、2体どころか11体の人骨が集められたお墓だったということがわかったのです。」

札幌医大の調査で「18号墓」と名付けられたこのお墓は、永谷さんが掘っている時に出てきたそうです。
もともと見つかっていた2つの頭骨が出てきて、「これで全部かな」と思いながら掘り進めていくと、次から次へと骨が出てきたのだとか。さらに骨の並び方も部位ごとに分けてきれいに配置されており、普通のお墓とは明らかに違う様子に「これは大変なものが出てきたな」と驚いたそうです。
30年の時を経ての大発見となりました。

掘った土の山。大切に保管しておき、調査の最後に埋め戻す時に使います。

発掘調査というと漠然と「宝探し」のようなイメージを持っていましたが、永谷さんのお話から、闇雲に掘ったりするものでは全くない、ということがよくわかりました。
日程や作業行程など綿密な計画を立てた上で細かくデータを取りながら掘っていくため、初年度の2018年は地形を把握するための測量作業からスタートし、翌年は遺跡の広がりを調べるために20メートルおきのマス目を組んで、1メートル四方の小さな穴をあける作業と、本格的な発掘に入る以前に様々な調査が行われたそうです。

地道で骨の折れる仕事なのですね。発掘されたものを見るだけでは想像もつきませんでした!
それにしても札幌医大の調査から30年間も時間があいたのはどうしてなのでしょうか。

「有珠モシリ遺跡は、すぐに開発が及ぶような場所ではないので、環境が壊される心配がそれほどないと言えます。また当時の調査で、遺跡の考古学的価値がある程度わかっていたことも大きいです。
発掘調査というのは、言ってみれば遺跡を壊してしまうことですから、掘りたいなという気持ちはあっても、簡単には掘らないのです。
発掘という行為によって遺跡を壊してしまって、それに答えられるくらいの成果が上がるかどうか、というところが重要なポイントとなります。そういった経緯で結果的に30年間保存されることになりました。
近年DNA分析の精度が上がってきたことや、新たに学会の中での研究所法の蓄積もあり、そろそろチャンスがあれば、新しい目で新しいことがわかる調査ができるな、という時に資金が手に入って、掘ってみましょうということになりました。」

古代の文化への深い敬意と、自然環境への配慮のもとに遺跡発掘が行われていることを知って驚きました。
実際の作業は力仕事が多く、しかも掘る時には繊細さと極度の集中を要する大変な作業のようです。
雑に掘って大切な出土品を傷つけてしまわないように、丁寧に丁寧に進めていくのだとか。
大発見の裏側に、惜しみない労力あり!なのですね。

昨年の発掘品の一部も今回の企画展で観覧することができます。
東北芸術工科大学の研究室では、現在も発掘品の整理や調査が行われているそうですが、永谷さんによれば、すごいことがわかってきているそうです。
8月7日(土)には青野准教授による特別講演会が開催されますが、そこで最新の調査結果の一端が披露されるかもしれません。また9月には昨年に続く発掘調査が行われ、現地報告会も開催予定とのことでした。

地元の遺跡といっても普段はなかなか接点がなく、詳しく知る機会がありませんでしたが、実際に発掘品を見たり、学芸員の方のお話を聞くと、興味が湧いて身近に思えてきます。古代の人たちの文化と現代の私たちの暮らしとのつながりがリアルに感じられました。
夏休みにおすすめの企画展です!ぜひ足を運んでみてください。
企画展「有珠モシリ遺跡」
開催期間:2021年6月22日(火)〜8月22(日)
開館時間:9時〜17時(最終入館は16時30分)
観覧料:一般・大学生・高校生300円、小中学生200円(未就学児無料)
休館日:月曜日、月曜が休日の場合はその翌日
問合せ:教育委員会だて歴史文化ミュージアム学芸係(電話 0142-25-1056)
詳細は下のリンクからご確認ください↓↓
※有珠モシリ遺跡は私有地のため、通常立ち入り禁止となっています。
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