■ハワイの和尚は鍋奉行(3)
天台宗ハワイ別院の荒良寛和尚はなかなかの人物である。今年で80歳になる。日本にも年に4~5回はやって来て仏画の個展を開いている。 天台宗というのは武家の宗教であった為に、戦後は日本中どこでも苦しい経営を強いられている。何故なら他の宗派のように檀家が殆ど無いからである。
ハワイの天台宗も全く事情は同じで、荒良寛和尚はお寺の経営の為に仏画を描いて、それを日本で売っている。だから日本でも結構有名な和尚である。
その良寛和尚に夕食に誘われた。場所は日本料理店の『都』にすると言う。
ホテルからダックスフントのような胴体の長いリンカーンコンチネンタルのリムジンを頼んだ。
滅多に出来ない贅沢である。都はホテル・ニューオータニの中にある。和尚のお勧めの『しゃぶしゃぶ』を注文する。
この店の女将も女性店員もみな和尚とは35年もの付き合いのようだ。軽口を叩きながら料理を食べる。鍋の最後はオジヤにすると言う。
『中の具を全部出せ』と和尚から指示が来た。指示通りにすると、ご飯を入れて玉子を入れてかき混ぜる。私は玉子を入れたらあまりかき混ぜない方が好きだ。

それを茶碗に盛って、そこに付け汁に使った醤油とゴマダレを適量入れろと言う。
どう見ても美味しそうじゃない。でも、仕方ないから指示通りにする。やはり美味しくない。私は酢醤油だけの方が美味しいと思う。和尚は『美味しいだろう?』と聞く。
皆は『初めて食べたが、これは美味しいですね~』と言っていたが、本当かなー?和尚は日本酒を飲み、鍋奉行をして、ご機嫌で帰って行った。
最終日にはステーキを食べに行った。前回の予約で満席の為に断られた店である。
和尚も来ると言ったが、都合が悪くなったか来なかった。
この店は『RUTH'S CHRIS STEAK HOUSE』という名前で、ワイキキからは少し離れているが、わざわざ行く価値はある。予約をしないと入れないが、ハワイへ行ったらお試しを。

(おまけの話)
10年以上も前の話だが、同級生の友人夫婦4組でハワイ島にゴルフに行った。
その時にアメリカ本土からも同級生E君夫妻が来て落ち合った。ハワイ島の豪華ホテルにみんなで宿泊して、5組の夫婦でゴルフ三昧であった。
F君は日本の自動車部品会社に就職し、アメリカとは何も縁の無い仕事をしていた。
ところが、ある時から日本の自動車メーカーが次々とアメリカ本土に工場を建てた。
部品メーカーのF君の会社もそれに連れられてオハイオ州に工場進出した。2年目にオハイオの田舎にあるその工場を訪ねたことがある。
送別会では心細そうにしていたF君は堂々と英語を喋って仕事をしていた。
その後、彼の仕事の成果が認められて、合弁会社の親会社の社長まで上り詰め、会社の自家用ジェット機でマスターズのゴルフトーナメントを見に行く身分にまでなった。
その彼もアメリカで肉ばかり食べる生活を長く続けた為か、大腸癌となり、ハワイで落ち合ったゴルフ会が最後で帰らぬ人となってしまった。
世の中に必要とされる人は早く去り、私のようにどうでもいい男は長生きをしてしまう。