■この年になり宿題を出される
暮にイコロ農園のTさんから届いた小包の中に農園の木を伐採した時の端材が入っていた。 そしてメールで『K会長が伐採した木の幹を送りましたので、彫刻刀で遊んで下さい。来年来る時にその木で彫った仏像を2人に記念に下さい。これはメール魔から抜け出す為の宿題ですよ』、・・・とあった。
この年になって宿題を出されるとは思わなかった。
その端材は仏像彫刻には向かない桐の木と山栗か松の木らしいが、私にはその種類がよく分からない。
私は『弘法 筆を選ばず』と言うが、『仏師は彫刻刀も材料も選ぶ』と返信しておいたのだが、折角の好意であるからやってみることにした。
彫刻するには木が乾燥していないと駄目である。
後から割れたり、変形してしまう。
送られて来た桐の木は幸いに乾燥しているが、もう一方は乾燥していない。
仕方ないので、やり難い桐の木の方を選んで白衣観音像を彫ることにした。案の定、やり難い。
仏像彫刻には木曾ひのきが向いている。
子供の頃から宿題は気になってしまい、夏休みに入るとすぐに片付けた。
そこで、Tさんからの宿題なので、私はすぐに彫り始めた。
27日に材料が来てからずーと彫り続けて、12月29日の午後3時に彫り終えた。
それがこの仏像である。白衣観音菩薩像と地蔵尊である。
白衣観音像と地蔵尊
TさんとK会長に幸運が訪れることを願い、お地蔵さんには1本の枝に2体も彫った。満足な出来とは言えないが、材料が桐なら上出来だろうと思う。
お地蔵さん
お正月には私は病後で出掛けられないので、イコロ農園にプレゼントする仏像を彫り続けていた。22日にTさんに持ち帰っもらう仏像が勢揃いした。
Tさん、もう宿題は出さないでねー。
イコロに贈る仏像が勢揃い
(おまけの話)
やっと仏像を彫り終えて、それを写真に撮ってTさんとK会長に送信しようとパソコンを開いた。
そして驚いた。K会長からメールが来ていて、『Tさんから宅急便で届いた仏像の材料ですが、、材料が材料ですから大変だった事と思います。私の仏像のことですが、守り本尊が不動明王ですので、その辺で考えてください。』とあった。
これは考えるというのではなく、それを彫ってくれという注文である。
もう終ったつもりでいた私はなんと返信しようかと迷った。
例えていえば、『学校の先生から宿題をやって来なかった罰として、グラウンド10周!』と言われて、やっと走り終えたと思ったら、『あと10周!』と言われたようなものだ。
年末にはK会長から豪華なアワビとホタテを送られているので、断るわけにはいかない。そこで、また心を落ち着かせて不動明王を彫ることにした。
自然木の中の不動明王
この仏像は姿からして非常に難易度の高い仏像である。
そこで、今回は桐の幹をくり抜いて、その中に不動明王を入れることにした。
出来上りを見ると、自分で見てもこれは素晴らしい出来であると思った。
私は病み上がりだというのに、TさんとK会長から出された宿題を年内に済ませ、それでやっと落ち着いて正月を迎えられた。
これも仏教でいうところの『功徳』かもしれない。