■カニソムリエのいる宿(1)
2月15日から1泊2日の短い旅に出た。
今回は兵庫県の北の外れの、日本海に面した浜坂町である。
浜坂に行くのは厄介で、単線の山陰本線でジーゼル列車に乗ってしか行けない。東京から行くには新大阪駅、鳥取駅経由で、約7時間も掛る。
駅の改札を出ると、なんか寂しい町だった。(左側が観光案内所)
2018年11月に「北陸グルメ旅」に行ったことは、以前にブログに書いた。その時は城崎温泉を代表する高級旅館なのに、期待したような量の
カニが出なかった。
残念な思いを抱えた帰り道の浜坂駅で、乗換えの待ち時間があったので観光案内所に立ち寄った。
その時に案内所の係の女性から聞いた話が私の興味を惹いた。
宿のある通りと、カニのデザインのマンホールの蓋。
それは係員の女性が言った言葉だった。
「松葉ガニを食べるなら、ここ浜坂ですよー。浜坂にはカニ・ソムリエがいます。浜坂は宣伝が下手なので知られていないだけで、ここが一番です」
「高級旅館は無いが民宿に泊まれば、その日の朝に獲れた活カニが沢山出ます」。この説明を聞いて、私は来年は「是非とも来なければ!」と思ったのである。
玄関の脇の生け簀の上に、今晩のカニが置いてあった。
裏返してあるのは、カニが生きているので逃げないようにしている。
そして家族で松葉ガニを食べに浜坂の「カニソムリエのいる宿」に行ったのである。
そもそも「松葉ガニ」とは何か?
正しくは雄のズワイガニのことで、北陸では「越前蟹」、「丹後半島では「間人(たいざ)蟹」と呼ぶが、浜坂では「松葉ガニ」と呼んでいる。
浜坂の海岸に出て見たが、この日の日本海は波静かだった。
我々の宿泊先はネットで調べた、浜坂のカニソムリエのいる民宿「澄風荘」である。民宿に泊るのは何年ぶりだろうか?
果たしてどんな宿か少し心配がある。
社会人になってから、民宿に泊った記憶が無い。
浜坂駅の改札を出ると、そには愛想の無さそうなオヤジが待っていた。
夕食のテーブルの上に置いてあった今晩の夕食メニュー。
宿は駅からすぐ近くで、やはり民宿という感じが出ている。
どうやら元漁師が始めた宿のようだ。漁師に愛想を求めても無理だ。
2階の部屋に通されたが、知り合いの古い民家に泊めてもらう感じがした。
家全体は改築と増築を繰り返したせいか、私の部屋の造りに驚いた。
襖を開くと普通は押し入れだが、ここにいきなり洗面台があり反対側を開けるとトイレだった。だから両方を同時には使えない。
タグ付きのカニが出された。
(このカニを獲った幸栄丸のタグが付いていた)
この町は温泉の湧出量が豊富で、ひと休みしてから女将のお勧めの温泉施設「ユートピア」に行く。源泉かけ流しで、なかなか良い。
泉質は単純泉のようだ。
湯量が豊富なので、町の各家庭にも温泉が供給されているそうだ。
温泉に入った後に海岸に出て、そこからブラブラと宿まで戻る。
そして期待のカニ尽くしの夕食となったのである。
冷水に浸してワサビ醤油で食べる「松葉ガニの刺身」は贅沢だ。
(おまけの話)
いよいよ期待のカニソムリエの出す「活松葉カニ料理」である。
いやが上にも期待が高まる。食事の場所は食専用の個室が用意されていた。
「カニソムリエ」と書かれたエプロンを付けた女将が、タグ付きのカニを運んで来る。そして松葉ガニに付いての説明に続き、料理と食べ方を指導してくれる。
活カニの炭火焼きは、レアで食べるのが美味しい。
先ずはカニの刺身だ。太めの足を冷水に浸す。
すると肉が花のように咲く。テレビでタレントが見せる光景だ。
これをワサビと醤油で食べる。
次は焼きガニは炭火焼きで、塩を振りかけて片側だけ軽く焼いて食べる。足から肉を取り出す技を教わった。
これは初めて知った方法だが、簡単でよく取れる。
甲羅に入れたカニ味噌を焼いて、それに炭焼きカニを付けて食べる。
絶品で、これが一番美味しかった。
次はシャブシャブで、これも美味しい。カニの爪から肉を取り出す方法も初めて知った。鍋にする野菜が用意されているが、もう食べられない。
まだカニが残っている。
でももう無理なので雑炊を作ってもらったが、これがカニの出汁が出ていて美味しい。
今回の料理では、1人分は松葉ガニが1パイ半くらいが出たようだ。
城崎温泉の仇を打った感じだが、残してしまったのが勿体なかった。
カニのシャブシャブ。もうこの頃は腹がきつくて食べられない。