■桜ウォッチャーからの報告(上野公園)
東京で桜と言えば上野公園であるとテレビ局は思っているようだ。 私はそうは思っていないが、上野という地名は全国区なので、地方の人達は『桜』イコール『上野』と連想するのであろう。だからNHKテレビも、その人達の期待を裏切らないように、桜の季節は上野公園から中継をする。
そこで、私も桜ウォッチャーとしては、あまり乗り気ではないが上野公園に行った。それは他にも理由があったからだ。
東京国立博物館で国宝『阿修羅展』が開催されているからである。仏師である私は仏像展があると必ず見に行く。
阿修羅展
仏師になる前は仏像なんて全く興味が無かったが、仏像彫刻を初めてからは、私は仏像を見る時には一般人とは違う見方をする。
ところが、東京国立美術館に行ってみて驚いた。
入場制限をしている。
チケットを買っても入るのに40分も待つ。
中に入っても混雑していると係員が言う。
そこで今回は入るのを止めた。
まだ6月初旬まで開催しているのだから・・・。
私が仏像彫刻を始めた頃から、あちこちで仏像展が開催されたり、NHKテレビで仏像の番組が放映されるようになった。・・・ような気がしている。
私が興味を持つと、暫くして世の中がそちらの方向に向かうような気がする。・・・なんて言ったら、女房が『あまりに自己中心的よ!』と言った。
(おまけの話)
上野公園を通り抜けて東京国立博物館に向か道路には別世界が広がっている。
仏像なんてまるで関係無い人達が、桜の木の下に陣取って明るい内から酒盛りをしている。
夜の為に陣取りをしている若いサラリーマンがブルーシートに寂しそうに座っている。きっと新入社員なんだろうと思う。
いつもはこの公園の主であるホームレス達も、この桜のシーズンだけは居場所が無くて、公園の片隅で小さくなっていた。
今年の上野公園の花見には異変が起きているとテレビが伝えていた。
(ホームレスの話)昨年までは花見客が食べ物をくれたのに、今年は誰もくれない。
(公園内の売店のオヤジ)今年は持ち込みが多く、売店は通り抜けてしまう。
(引退した花見客)今年は刺身も無いし、ビールも発泡酒になってしまった。
(サラリーマン)今年は料理を店で買わずに、家から持って来ている。
(桜ウォッチャー)上野公園の桜は60年も経つので、そろそろ木の寿命が近付いている。近い内に上野公園の花見は出来なくなる。