スペイン巡礼の旅
サンタ・コンバ(Santa Comba)という町は人口9千人ほどの町。
Comarca do Xallas(コマルカ・ド・シャージャス)というガリシア州西部ア・コルーニャ県にある郡に属する。
どうもバリバリのガリシア語圏のようである。
この日はこの町の文化ホールで講演会が開かれるのだ。
今回の講演会はAteneo Xalleiro(アテネオ・シャジェイロ)という、さまざまな活動を組織する非営利団体の主催するFeros Corvos(フェロス・コルボス / 猛々しいカラス?)というフェスティバルの中で行われる。
このフェスティバルは6月から9月にかけて、サンタ・コンバで詩のリサイタル、コンサート、会議などを開催するものらしい。そこには著名な演奏家や歌手、詩人や文芸評論家、言語学者などが出演する。
旅の最後の四国遍路講演会はこの高尚なフェスティバルのプログラムのひとつとして開催されることとなったわけだ。
このポスターを直訳すると・・・
音と言葉の「猛々しいカラス」フェスティバル
2022年6月から9月 サンタコンバで
カミーノ(道)を知る一連の会議
松岡 敬文
四国遍路 日本の巡礼路
8月6日午後8時文化の家で
おー・・・ちゃんと松岡団長の名前も掲載されているではないか。
主催者のFacebookでは、今回の講演会の前振りも告知されており、「四国遍路を紹介する日本代表団はすでにガリシア州に入ってきている」とといったニュースも出していたくらいなので、さぞかし期待していた人もいたのだろう。
しかしロゴやポスターには「カラス」ばかり出てくる。
そこで僕は
「マリア・カラス、エディット・ピアフ、美空ひばり」
一番嫌いなのは烏だと、はる奈さんに駄洒落を言ったら、彼女は微笑みを返してくれた。
彼女の鍵盤を追う鋭い目から暖かい眼差しに変わった瞬間だった。
※この3名について知らない人がいたら勉強してください(笑)
それにしてもなぜカラスなのだろう?
日本ではカラスと言ったらあまり良い印象がない鳥である。
その疑問に対して帰国してから、はる奈さんに改めて聞いたら教えてくれた。
「なぜカラスかというと、19世紀の後半、エドゥアルド・ポンダルという詩人があのエリアをさすらっていた時に作った詩が後々有名になりました。サンタコンバの力強い野生のカラスを見て書かれたものでした。その詩の第一節を今回のプロジェクト名にしました。皆さんが帰国された後、エドガーアランポーの「大鴉」を題材にしたモノオペラや、種田山頭火の四国遍路やカラスを題材にした句をピアノと一緒にリサイタルしたり、地元の活躍している詩人、第一線で活躍している言語学者や、タイポグラフィストの講演会をしました。」
と、なんとも文化度の高いご回答をいただいたのだ。
鴉啼いてわたしも一人 (山頭火)
なるほど、ここにも俳人がでてきたな。
あの悲しみを全部背負ったような山頭火か。
次回以降に美人俳人の「黛まどか」がここの巡礼路を歩いた話も紹介しようと思っていたが、サンティアゴ巡礼路にしろ四国遍路にせよ、どうも巡礼路というものは俳人と相性がいいようである。
まあ、松尾芭蕉も奥の細道であるから自明の理か。
そういうえばウチのグループにも俳人がいたな。
しかし
「カラス、雀、ひばり・・・」なんて駄洒落を言っている自分の文化度の低さが恥ずかしい。
俳人ではないから駄洒落しかないのである。
さて、こうして最後の講演会は無事終了し、僕は客寄せくらいしかしなかったが、4回の講演会は将来の四国遍路の繁栄にきっとつながったと確信したわけである。
ところで武部はる奈さんはプロのピアニストだ。
ここで彼女の演奏と、我々の帰国後にあったコンサートの様子をご紹介したい。
武部はる奈さんの演奏
実に洗練されてかっこよく弾いているではないか。
スペイン語バリバリで色々と現地の文化事業にも活動されている。
こんな凛とした倭会女性がこうしてヨーロッパで大いに活躍されていることに僕は大いに誇りをもったのだ。
武部はる菜さんプロフィール
武部はる菜さんのYoutubeはこちら
サンティアゴ・デ・コンポステーラにはいる
最後の講演会が終わった。
そして片付けのあと、我々は30kmほど車で走り、あの聖地にはいる。
巡礼者が目指す目的地。
サンティアゴ・デ・コンポステーラである。
我々がサンティアゴに入ったのは、すでに夜10時を過ぎていた・・・。
夜も遅くなっていたので早速食事を取ることにした。
食事がとれないことは想定していたが、腹はかなり減っていた。
我々は武部さんの馴染みのレストランに行った。
武部さんのご自宅はこのレストランからすぐそこ。
義母のいるサンタ・コンバとは30キロ離れて娘さんと3人で生活しているとのこと。
このレストラン。何を食べても美味しく、デザートはホタテ貝に描かれていた十字架があり、食べるのには躊躇したが、いやいや、食べたら実に旨いのであった。
話はなんだか盛り上がり、夜の10時を過ぎてからの食事は真夜中の12時まで続き、お店から「もう看板だから」と言われてしまった。
深夜ではあったが、団長がどうしても巡礼者が集まるバーに行こうと誘うので、川田さんと3人で行った。
だが4つの講演会が終わり、我が団長もさぞかし荷が降りたのだろう。
団長は酔い潰れ、何とか部屋に戻った時はもう月も沈み、1時半になっていた。
人影はまばらであったが、明日の日中の大聖堂が楽しみだ。
(次回公開予定 11月10日)【第6日目】サンティアゴ・デ・コンポステーラと巡礼路
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