心の伊達市民 第一号
ビルの歴史の終りに立ち会う
家から歩いて浜離宮に向かうと、浜離宮の入口になる交差点の右の方に変なビルが見える。
屋上の塔は真っ赤に錆びている。外観はおもちゃ箱の中にあった積み木を出して積み重ねたような、四角い形のコンクリートの部屋が見える。
ここは「中銀カプセル・タワービル」という名前のビルである。
以前からこのビルの存在はしていたが、遂に今年4月12日に解体されると新聞で読んだ。
「中銀カプセル・タワービル」の住所。
この中銀ビルは建築家の黒川紀章氏の設計で、1972年に竣工した。
カプセル1つの大きさは10平米で、ワンルームマンションの部屋よりもかなり小さい。
当時は大変な評判を呼んだが、ビルの老朽化が進み、またアスベストが使われていることから解体となったようである。
今年の1月まではビルの「見学ツアー」もあったようだが、知っていれば私も内部を見たかった。
海外でも有名だったようで、映画の撮影などにも使われたようだ。
カプセル・タワーを下から見上げる。
解体の話が出る前の時だが、私は興味があったのでビルの入口に行ってみたことがある。
ビルの入口の案内板には空き部屋も多く、個人名は少なくカタカナの会社名が多かった覚えがある。
「無くなる」となると寂しいもので、「存在した」記念の写真を残しておこうと思った。
全景が写せる場所は無く、「下から」、「横から」、「歩道橋の上から」と、色々な場所から撮影した。
やはり私みたいな人はいるもので、カメラを持った男が2人いた。
ビルの形は非常にユニークだ。
私は横断歩道経の上に行き、正面からビルの全景を撮ることにした。
そこで写真を撮っていたら、見知らぬオバサンから声を掛けられた。
彼女もカメラを持っていて、私と同じ場所から写真を撮ろうとしていたのである。
そして彼女は『私は埼玉県の博物館の関係者ですが、解体後にこのカプセルを1個、寄贈してもらえることになっているのです』と言った。なんだかとても嬉しそうだった。
丸窓の四角のカプセルが1部屋。
この時に撮影したカプセルタワーの写真をロサンゼルスに住む、女房の親戚の元建築家に送ってあげた。
すると次のようなメールが届いた。
『懐かしいですね。一時代前の象徴的建物です。黒川紀章が野心満々でメタボリズムという建築ムーヴメントを提唱し始めた頃の代表的建築物ですね。建物は生物のように成長する。
だからこの建物も古くなれば、古い部分を取り換えていけばいい。「ユニットにした各部分は取り換え可能なのだ」というコンセプトです-----が、古くなった今、そのコンセプトは実用的には機能しないで、結局取り壊し、という現実。建築家は理想を語る。往々にして大口をたたく。しかし、人類には未来への方向性を示すリーダーも必要』。
歩道橋からの全景(ここで見知らぬオバサンから声を掛けられた。
4月13日に、また「中銀カプセル・タワービル」の前を通った。
12日から解体工事が始まるとのことだったので、どのくらい工事が進んだかが気になった。
ビルの前は囲いが出来て、解体工事用の資材が山積みだった。
上を見上げたら、ビルにネットが掛けられていて、足場も作られていた。
少し離れた場所には写真を撮り人がいた。
さすがに名物だったビルなので、通り掛かった人達は足を止め、スマホでビルの撮影をしている。
解体したビルから取り出されるカプセルは、全国の博物館に寄贈されるようだ。
工事は「年内」を予定しているようなので、これからも時々、見に来ようと思う。
このビルはこれで50年の歴史を終える。それ以上の歴史を生きて来た私の歴史は、いつ終りを迎えるのだろうか?
歩行者用通路は少し狭くなっていた
(おまけの話)
建築家という職業の人は、芸術家の範疇に入るのかもしれない。
建物に「自分らしさ」を打ち出したくなるようだ。
それが評価の高い大先生ともなると、誰も何も言えなくなるから困る。
北海道でも大先生の建築物が、寒冷地仕様になっていなくて不評だった。
斬新で、機能的で、素晴らしいデザインなら、全く問題ないのは誰でも分かるが・・・。
隈研吾氏の設計の新国立競技場。
私は関係者ではないので、見た目が「面白い建物」も嫌ではない。
「風水」に拘って、建物の真ん中に穴があいているビルも困るのではないだろうか?
最近は隈研吾氏の作品に人気があるようで、新国立競技場も彼の設計である。
私はオリンピック後に有料見学に行ったが、木がふんだんに使われた見事な競技場だった。
旧「De Beers ビル」(銀座2丁目)
銀座で目立つのは、「ルイ・ヴィトン」ビルである。
壁面が銀色で波打っていて、それが光を受けてみる場所によって様々な模様に変る。
もう1つは少し古いが、「V88ビル」(旧「デ・ビアス」)のビルである。
見上げると、ビル全体がねじれている。かなり奇抜な形のビルだ。
でも専門家に言わせれば、「形の変なビルは室内も歪なので、使い難い」とのことだった。
「Louis Vuitton ビル」(銀座7丁目)
北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。
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