心の伊達市民 第一号
12月に北海道のXさんからメールが届き、「Fさんが亡くなった」と知った。
私は彼の家にも行ったし、東京での作品展にも駆け付けた。
そのメールで彼から思い掛けない難しいテーマを投げかけられた。
引退してからは難しい話題は避けているので、久し振りの難題であった。
それは「未来は決っており、自分の意思など存在しない」という説である。
(下の6枚の写真は、Xさんが1月7日の大雪の後に撮影してくれたものです)
彼はメールに書いて来た。『「人間には自由意志がない」という説に妙に納得しています。その事実は結構前から科学的にも実験され、すでに多くの証拠も出されています。多くの宗教家はその昔から言っていたことではありますが]』
『ただこれは我々の価値観を根底から覆すもの、そうだとしたら虚無的になってニヒリズムでも走りそうですね。でもよく考えれば、こんな楽な考え方はありません』。
『もし未来があるとしたら、自分で選ばなくても不安や思い付き、思考は勝手にやって来るわけで、本当にどうしようもないですね。つまり抵抗できないから、諦めるしかないわけです。ちなみに私が最近読んだ本は、よくまとまっていると思いました。
「未来は決っており、自分の意思など存在しない」(著者・妹尾 武治)
橋本さんもこの本を読んで、感想を聞かせて下さい』とあった。
参ったなー。高齢者に難し過ぎるテーマの投げ掛けだ。
わざわざその本を買ってまでは読みたくないので、図書館に予約した。
しかし中央区図書館にはこの本が蔵書となっていないので、少し時間は掛るが他区の図書館から借りてくれるようだった。
しばらくして、その本が入庫したと連絡が入った。早速、読んでみたが、私には難解だった。細かい字で305ページもあり、本の最後には参考文献として8ページもの資料が載っていた。
本のタイトルにあるように、「未来は決っており、自分の意思など存在しない」ということを哲学、文芸、映画、マンガ、漫才、宗教、絵画、AI、VR、ゲーム、心理学、アート、サブカルチャーなどを参考に縦横無尽に解説している本である。
読み終わって、ドッと疲れてしまった。なぜかというと難解である上に、よく分からないからである。結婚相手も、仕事も、大病するのも、宝くじに当るのも、不幸になるのも、全て決められているという説には、そうかもしれないが私の気持ちが受け入れられない。
「誰しも自分の行動は自分の意思でコントロールしていると直感的に思っているが、果たしてそうだろうか?」と投げ掛けられる。
「全ての行動は決められているように、行動している」と言われても、「そうかなー?」と思う。
恵まれた人生と、恵まれない人生も決められているなら、努力をしても報われない。でもそこでまた「努力しないのも決められている」と言われたら、堂々巡りである。こうなると科学ではなく、宗教であると感じた。
私の父が胃癌の末期症状だった時に、知り合いの人が新興宗教の折伏に来た。私は宗教に縋りたくないので、断った。そしてしばらくしたらその人の主人が交通事故で大怪我をした。私は『信心していても事故で大怪我をした』と言ったら、『信心をしているから怪我で済んだ。信心をしていなければ死んでいた』と言った。
私は『信心していないが、事故に遭わない』と反論したら、彼女は言い返せなかった。
この本を読んで、その時のことを思い出した。
(おまけの話)【12月の電話】
スマホの電話が鳴っても私は毎日出歩いているので、バスや地下鉄の中のことが多い。また歩いている時はスマホを鞄の中に入れてあるので、気が付かないことが多い。ある時、家にいる時にスマホが鳴った。画面を見たら、「0142」の局番だった。
この局番は伊達市である。電話に出ると、「心の伊達市民事務局」からで、『12月発送予定のホタテ貝が、貝毒の発生で出来なくなった』という残念な知らせだった。自然を相手の漁業だから仕方ないが、でもそれより漁師が気の毒だった。
(下の3枚の写真は、壮瞥町のIさんが12月18日に撮影して送ってくれたものです)
その日の夜に、壮瞥町のIさんからも電話があった。
彼の電話は「掛け放題」の契約をしているので、いつも彼から電話をくれる。
少し前に北海道米「ななつぼし」を注文しておいたが、その発送の知らせだった。
北海道米は「ゆめぴりか」が有名だが、我が家は「ななつぼし」の方が好きである。
彼は『いまは年末のせいか、荷物の届くのがいつもより遅れそうだ』と言っていた。
きっと最近話題の「運転手不足」も影響しているのだろう。
彼との電話はいつも長くなる。
『いまはリンゴが終り、売店も5月まで閉める』と言っていた。
そこで私は『では仕事も無く、なにをしているの?』と聞いたら、『それなりにやることがある』とのことだった。『最近は人手不足で人件費が上がり、肥料代も上がり、燃料代も上がり、電気料金も上がり、なにもかも上がり困っている』と嘆いていた。
一方で良いこともあり、『今年はリンゴの収穫が良く、早目に全て売り切れたのが良かった』と言っていた。近況報告だけでなく、話は私が伊達市に滞在していた時の話題にも飛ぶ。天気予報では胆振地方が大雪のようだったので、雪の写真を送ってもらった。
北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。
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