心の伊達市民 第一号
最近になって気が付いたことがある。
少し私が鈍いので、気が付くのが遅れたという事情もありそうだ。
それは「言葉が不要の時代」になっていることだ。カフェにいるカップルでさえ、2人とも黙ってスマホを見ている。
私の経験では、特にお金を払う場面でそれを感じる。
これは日本語の分からない外国人観光客にとっては、素晴らしいことかもしれない。
人は常にお金を払う生活をしているが、昔と違って支払い時に「言葉」が要らないのである。私が出掛けた時によく利用するのは、ランチ、デパート、コンビニ、映画館、ダイソー、スーパーマーケット、電車、地下鉄、都バス、東京BRT、ユニクロなどである。
これらの店を利用する場合に、言葉をしゃべらなくても用は済むし、しゃべりたくても「しゃべる場面」さえも無くなって来ている。地下鉄、都バス、東京BRTはシニアパスを持っているので、乗る時に運転手にパスを見せるだけで言葉は不要だ。
ランチであるが私の行くのは「蕎麦屋」か「うどん屋」なので、最小限の言葉で済む。
例えばうどん屋で「カケ小」と言い、列の先で好みの天婦羅を皿に取る。先に進み、レジで表示された金額を支払う。だからうどん屋では「カケ小」とだけしか言わない。
蕎麦屋では券売機で好みのソバを発券し、それをカウンターに出す。しばらくして「天婦羅そばの方」と呼ばれるので、取りに行く。だから蕎麦屋では言葉は不要だ。
ラーメンを食べたくなった時は、日高屋へ行き席に着く。
目の前の小型タブレットで、画面に出た好みのものを押す。そして「注文」を押す。
するとしばらくして、自動的にウェイトレスのおばちゃんがラーメンを運んで来る。
食べ終ると画面で「支払い」を押して、レジで料金を支払う。
昼時は忙しいので、「ありがとう御座いました」も言われない。だから、ここでも全く言葉は要らない。ランチで言葉が必要なのは、なにかトラブルがあった時だけである。
滅多に行かないが、久し振りで入ったイタリアンの「サイゼリア」では、席に着くとテーブルに注文伝票が置いてある。メニューから好みの料理の番号を、自分で書いて呼び出しボタンを押す。するとウェイトレスが来て、伝票を持って行く。
しばらくすると車輪付きのロボットが、私の席に料理を運んで来る。
支払いは伝票をレジに持参してセンサーとに当て、自分で画面を見て現金かカードを選んで支払いをする。ここでも、私に言葉が必要な場面は無い。安い店に行くと、段々と無口になりそうだ。
たまに少し高級な店に行くと、ウェイターが注文を取りに来る。
なんだか「ホッ」とする。メニューから選んで言葉で注文し、しばらくして料理と伝票を持ってウェイターがやって来る。「お待たせしました」と言われ、「ありがとう」と返す。
昔は大衆食堂でも、こうであった。言葉がドンドンと不要な社会となって来ている。
そのせいか日本語で上手く表現できないで、すぐキレる若者が増えたような気がする。
でもよく考えたら、言葉不要のシステムを最初に導入したのはJRではないか?
駅に行くと、自動切符発売機がある。そこで自分の行き先のボタンを押して、投入口にお金を入れる。すると切符とお釣りが出て来る。
その切符を自動改札口の機械に通すと、ドアが開いて中に入れる。
昔は駅の切符窓口で「東京駅」などと言って切符を買い、改札口では駅員が切符にパチンと三角の切込みを入れた。あの時代は、まだ言葉が必要だった。
(おまけの話)
階下のスーパーマーケットに行くと、買い物篭に必要な物を買ってレジに進む。
ここはセルフレジになっている。それが難しい高齢者のために、レジ係のいるレーンもある。私はセルフレジに進み、右側に篭を置き、買った品物をセンサーに当てて、ピッと音がしたら左側のマイバッグに移す。
支払いは現金、クレジットカード、電子マネーなどから選ぶ。支払いが終れば、それで終わりで言葉は要らない。
ダイソーへ行った時もやり方が同じだったので、スーパーでやっているので困らなかった。でもこの方式では悪い奴が買物した品物をセンサーに当てなければ、盗まれたことと同じになる。出口にセンサーを設けて、支払いが済んでいない物を持って出ようとしたら、ブザーが鳴るのがよいのではないか?
テレビの特集で、スーパーの万引きを捕える場面を放送しているが、それも無くなるのではないだろうか? 中央区の図書館では「借り出し」の手続きを画面でしないで外に出ると、センサーが感知して「ブー!」と大きな音が出る。
ユニクロで「凄い」と思ったのはセルフレジで、買い物1つずつをセンサーに当てず、買った品物全てを精算の場所に置くと、一気に料金が示される。
一方で私はよく銀座の三越デパートに行くが、ここでは支払いは昔ながらの対面である。欲しい品物を店員に言うと、「レジ袋は必要ですか?」と聞かれ支払額を告げられる。
ここでは買う前、買う時、支払い時と言葉を使う。それがデパートという業態の、高額販売のノウハウなのかもしれない。これも急ぐ時や、気分がすぐれない時には面倒である。人というものは、全く「勝手な生き物」である。
北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。
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