心の伊達市民 第一号
1984年に初版が出て2007年に文庫本になった、韓国人の学者である「李 御嚀」の書いた「縮み志向の日本人」という本を読んだ。この本はかなり有名にもかかわらず、中央区の図書館に蔵書が無く、他区から借りた本なので貸し出しの際に係員から「取り扱い注意」と言われた。
私が読んでも「そうだよなー」、「なるほど」などと思い当たることばかり書かれていた。本の中から面白そうな項目を少しだけ選び出して、以下に書いてみた。
著者の「李 御嚀」は日本占領下で教育を受けたので、日本語はネイティブである。
しかも学者であるし、日本のことは日本人以上に良く研究していて驚くばかりだ。
日本人が他の国の人と決定的に違うところは、「縮み志向」だと指摘している。
それが「悪い」とは言っているわけではなく、外国との比較の話である。
日本人は歴史的な事情から「欧米に近付く」をモットーとして来たので、比較する時には欧米とする。だが著者が言うのは、過去の日本の学者はアジアを含めて比較しないので、「日本特別論」と勘違いしている部分があるとも書いている。
日本は漢字を中国から導入したが、それを日本風に改良して「ひらがな」と「カタカナ」を作った。これは代表的な「縮み」で、漢字の一部を取り出して「一音一文字」の「ひらがな」にした。
縮めたもので、アジアを含めた外国に例のないものは「俳句」である。
「5-7-5」のたった17文字に、全てを込めている。
「古池や 蛙飛び込む 水の音」は、17文字だけで、その場の情景や音まで表している。
「扇子」も日本だけのものである。
世界中に団扇は昔からあったが、それを縮めるために折畳みにした発想は日本的である。しかも扇子に美術的な要素を持ち込んだ。更に鉄で作った「鉄扇」を作り小さな武器にもした。
傘も世界中にあったが、それを折り畳み式にしたのも日本人である。
今では更に畳んで、傘なのにポケットに入るまでにした。
最高傑作は「折詰弁当」である。
これの凄いところは、フルコースの食膳を縮めて可動的にしたことである。
外国の料理は汁があるものが多いが、日本の弁当は乾きものであるから可能なのかもしれない。
著者は言う。『どうやら日本人は散らばっているものを見ると、なんでも箱にしまわないと気が済まないようだ。だから「詰める」が、色々な日本的含蓄を含むようになった』。例として「集まる→詰め合う」、「張り付く→詰所」、「クライマックス→大詰め」。 詰めることが出来ないことを「つまらないもの」と言う。
神様のいる場所は神社であるが、これも縮めて可動式した。
その小さな神社が「神輿」であり、神様の方から氏子の方に出向いて行く。
更に縮めて神社を家の中に入れるために神棚を作った。
縮めの究極は、神社のお守り札である。
このように書いているが、これはどうかな? 私は神官に聞いてみたい。
日本人が良く使う言葉に「どうも」があるが、これは外国人には理解不能である。
お礼も「どうも」、お詫びも「どうも」、挨拶も「どうも」、なんでも「どうも」と縮めてしまう。英語で言えば「Very」であるから、これではなんだか分からないのに、日本人は「どうも」で分かる。
日本人は昔から縮めたり小さくするのは美しいことで、枕草子には「ちひさきものはみなうつくし」とある。
外国人から「縮み志向」と指摘されると、「そうかもしれない」と思ってしまう。
お勧めの1冊である。
(おまけの話)
【いただきます、ごちそうさま】
この本の中には出て来ないが、私が思う日本語には特徴があると思う。
その代表例は「いただきます」と「ごちそうさま」ではないだろうか?
英語ではこれに当るフレーズは無い。だから日本人は欧米人とご飯を食べる時に、どうすれば良いのか迷ってしまう。
このフレーズは中国語にもベトナム語にも無い。
韓国語には多少、ニュアンスは違うがあるようだ。
でもレストランで食事をしお金を払った後に、「ごちそうさま」と言って店を出るのは日本だけではないだろうか?
【単語を縮める】
日本人は単語を縮めるのが得意のように思う。特に英語を縮めるので、英語圏の人は戸惑ってしまう。我々が良く使う単語では、次のようなものがある。
「コンビニ」、「パソコン」、「スマホ」、「バイト」、「エアコン」、「ゼネコン」など書き出したらキリがない。
もうこうなると「元の英語」がなんだったのかも、忘れてしまう。
だから英語圏の人はこの言葉を初めて聞いて驚くし、日本人から「アメリカ人なのに、英語を知らないの?」と言われたりするそうだ。
【語学力】
私の若い頃の苦い思い出の話である。日本人は島国のせいか、外国語に非常に弱いと思う。59年前に初めてニューヨークに行き、それまでに米軍将校夫人に習った英語を試してみようと思った。
そして宿舎の近くのバーに行き、隣のアメリカ人に話し掛けてみた。
私がさんざ話した後に、その男は言った。『へー、日本語って英語に似ているなー』。
それ以来、私の英語は上達していない。外国語の上達は努力もあるが、才能の方が大きい。
北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。
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