
心の伊達市民 第一号
私の子供の頃は戦争が終ったばかりで、食べ物も十分ではなかった。
成人に達した頃から日本は急速に経済成長を始めたので、良いニュースを聞くことが多かった。
それが引退したら、悪いニュースが増えて来たように感じている。
毎月最終金曜日の12時10分から、築地本願寺で「ランチタイム・コンサート」がある。
本願寺に設備されているパイプオルガンを使って、演奏会を開くのである。
本堂で静かにパイプオルガンの演奏を聞き入ると、「心から穏やかに」なれたように感じる。

築地本願寺の正門から
私は2003年に引退したので、その後には2011年に東北大地震による死者多数と福島原発事故が起きた。
その後も色々と事件は起きたが、一番大きな話題は「ロシアのウクライナへ侵攻」だろうと思う。
戦争に至った事情は色々と言われているが、私は専門家ではないのでこれには触れない。
テレビニュースで、ウクライナの戦況を取り上げない日は無い。
「ロシアは悪」、「ウクライナは善」という報道が殆どで、とても異論をはさめる状況にない。

手水舎は無く、手水場になっている。
私が気に入らないのは、テレビニュースにはコメンテーターと称する男女が登場することである。
ニュースは真実を伝えてくれればそれで十分である。弁護士、評論家、芸能人、大学教授、元スポーツ選手、なんだかよく分からない若者などが、ウクライナ問題でコメントを言う。
専門家でもない人達が発する言葉なのだから全く無責任であり、場合によればテレビ局の指示通りにコメントしているのかもしれない。昔の映画館では本編が始まる前に、竹脇昌作の良く届く声でニュースを読み上げていたが、あれは良かった思い出がある。いまのテレビニュースも、あれで充分だ。

本堂内にはモニターテレビが設置されている。
「なんのかんの」と言いながら、私もウクライナの戦況に興味がある。
なんとかウクライナ軍がロシア軍に勝って、自由主義が独裁主義に負けないで欲しいと願う。
私は実際の戦争は知らないが、戦争の悲劇は体験的に知っている。
ベトナムに行くようになり、ベトナム戦争の被害を目の当たりにした。
アメリカの非人間的な「枯葉作戦」の影響で生まれた奇形児を捨てて逃げてしまった母親がいて、残された父親が悲惨な生活を余儀なくされていた。その県の出身者のベトナム人社長と一緒にその村を訪問し、ベトナムの会社から粗末だが家を贈呈する式典に参加したこともある。

築地本願寺の本堂は金ピカ。
引退後は出来るだけ「心穏やかにいたい」と思い、毎年夏には北海道伊達市で過ごすようになった。
その時はまだ私も元気だったし、町の友人達もみな現役で元気だった。
お陰で私達はずいぶんと親切にしてもらい、伊達市滞在を「心穏やかに」過ごすことが出来た。
寒くなる前に東京に戻ると、東京はまだ残暑が厳しかった。
庭の雑草は伸び放題、大事に育てていた「牡丹」は盗まれているし荒れ放題だった。
しばらくは雑草取りから始まり、元の生活に戻すのが大変だった。

この大きなパイプが左右にある。
その後、偶然に2011年の東北大地震の前日に、いまのマンションに越して来た。
そして管理組合の理事会に関わるようになり、翌年は副理事長になった。
問題山積みだった管理組合をなんとかしようと頑張り、古い理事達と対立した。
1年間で目標の90%くらいを改革したところで、あまりの非常識な人達と「もうこれ以上は付き合いたくない」と感じて、理事を辞めてベトナムに行った。そしてベトナムで「心穏やかに」過ごしていたのである。

5月の演奏はトランペットと合奏した(演奏者は僧侶)
いまはもう面倒なことには首を突っ込まないようにして、マイペースで生活をしている。
「面倒見の良さ」と「人のお役に立ちたい」という気持ちが、自らに面倒をもたらし、「心穏やか」にいられないようにしていたと反省している。
もう私ではどうにもならないが、ロシアがウクライナに負けて撤退し、中国も覇権を狙わずに大人しくなり、日本経済も少しずつでも良いから成長すれば、もう私には思い残すことはない。
そうなれば、本当の「心穏やかにいたい」が実現できる。

入口横のアジサイが綺麗に咲いていた。
(おまけの話)
ロシアがウクライナに攻め込んで、お互いに非常に大きな人的被害が出ている。
「なぜ21世紀にもなっているのに、発展途上国でもないロシアが無謀な戦争をするのか?」と疑問だった。
そこで図書館から借りて来た、「人はなぜ戦うのか?」という本を読んだ。
この中に偉大な科学者のアインシュタインと、精神分析学者のフロイトの往復書簡があった。
アインシュタインからフロイトへ、『人間の心底にある破壊を別の方向に導き、国家間の戦争を避けることは出来るのか?』と問いかけた。

「人はなぜ、戦うのか」★★
フロイトから届いた返書には次のように書いてあった。『人間から攻撃的な性質を取り除くことなんて、できそうにもない』だった。しかし最近の研究では心理学の分野でも、フロイトが主張した攻撃本能や破壊の衝動は、その存在がいまだに実証されていないということだった。
難しい話はこの辺にして、日本のテレビでは実際の戦闘場面が放映されない。
それなら『アメリカではどうなのか?』と思い、「Google USA」と「Yahoo USA」を検索してみた。
どちらもこの方法では日本のGoogle と日本のYahooに戻されしまう。

射砲で撃墜されるロシアのヘリコプター。
「なにか方法はないか?」と思い、ネット色々と検索してみたら、「USA」に接続する方法が解説してあった。それでアメリカのGoogle に接続して、「UKRAINE WAR YOUTUBE」と検索したら驚くような映像が山ほど出て来た。
戦車を上空から破壊する場面、高射砲で戦闘機を撃墜する場面、逃げ惑うロシア兵などの映像が見えた。
日本のニュースでは破壊された後の戦車などは出て来るが、破壊される場面は出て来ない。
実際の戦争を映像で見るという時代になり、ゲームと戦争の領域が分からなくなる恐れがある。
こんな場面を見た後では、とても「心穏やかにいたい」なんて言えなかった。

上空からドローンで攻撃されて破壊されたロシアの戦車。
北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。
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Rietty
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「手を動かす人たち」へのリスペクト。お酒と木と本の店 BACKWOOD【洞爺湖町】
8月下旬、洞爺湖町入江にお酒と本と木工作品を扱うお店がオープンしました。 「へき地、辺境、奥地」といった意味を持つ「BACKWOOD(バックウッド)」という名前のお店です。 その名の通り、入江地区の奥深く、人家もまばらな場所にひっそりと佇んでいます。 移住者の店主が、古い納屋をリフォームしてつくりあげた、素敵な空間をご紹介します! アパレル業界から田舎暮らしをもとめ洞爺湖町へ 国道から有珠山側に車を走らせること数分。 看板を頼りに細い路地を入っていくと、深い緑の中に三角屋根のお店が現れました。 有珠山の麓のすぐ近く、自然豊かでとても静かなエリアです。 黒いトタンの壁と看板の木材の色あいが緑に溶け込むようにやさしく目に映りました。 中を覗くと個性的な木のクラフトが並んでいます。 壁には本がいっぱい。 大きな冷蔵庫ではカラフルなラベルのビールがずらりと冷えていました。 元の家主が廃材を使い建てた築20年の納屋を改装したという店内。剥き出しの梁や壁はほとんど当時のままだそう。 レトロな雰囲気を残しつつ、今風でもあり。素朴で洒落ていて、どこかホッとするような温もりのある空間です。 店主の菅松 剛士さんは2021年2月に一家で東京から洞爺湖町に移住しました。 「会社勤めは向いていないと思いながらも、楽しく働いていた」という菅松さん。もとはバリバリのビジネスパーソンで、競争の激しいアパレル小売業界にて、ブランドの立ち上げ等に長く携わってこられたそうです。 お子さんの就学を機に、長年思い続けてきた「いつか田舎で暮らしたい」という夢を実現し洞爺湖町へ。 当初はもう少し中心街寄りの場所に住んでいたそうですが、ランニング中に偶然この土地を見つけて購入を決め、昨年末に移り住みました。 この古い納屋を見たときに「ここでお店を始めよう」と閃いたそうです。 菅松さん: もともと「いつか田舎に」というのはずっとあったんです。 20代の頃は沖縄と思っていましたが、年を重ねるにつれて住みたい場所がどんどん変わってきました。 妻の両親の実家が北海道なので、子供が産まれて連れてきた際に、日高のあたりを海沿いにドライブしていたんです。 その時に「うわあ、北海道に住みたい」と思ったのが、移住先に北海道を選ぶきっかけとなりました。 廃材を組み合わせたオーダーメイドの入り口ドア。今では貴重な磨りガラスや「総合案内」の文字が渋い味わいを醸し出しています。 北海道の人は「手を動かす人」 BACKWOODでは「北海道を軸に、クリエイターや素材にこだわったいいもの」をテーマに商品を取り揃えています。 「お店を始めるならまずは酒屋を」と以前から思っていたそうで、ワイン、日本酒など様々な北海道産の酒類の中から、専門店の少ないクラフトビールとスピリッツを扱っています。 クラフトビールは現在、4社をセレクト。おいしいクラフトビールが道内各地にある中で、厳選に厳選を重ねたこだわりのラインナップです。 左から 美深白樺ブルワリー: 日本最北のクラフトビール工場。希少な白樺樹液を副原料として使用。 忽布古丹(ホップコタン): 上富良野の地場産ホップで醸したクラフトビール。 NORTH ISLAND BEER(札幌): 「BEER IS ART」をコンセプトにカナダで修行したブルーマスターが醸造。 41 BEER CRAFT WORKS: 2021年にスタートした余市の醸造所。積丹岳の雪解け水(伏流水)を使用。 地場産ボタニカルの芳醇な味わいが広がる積丹ジン「火の帆(HONOHO)」。東京に住んでいた頃から愛飲していたという店主イチオシの一品です。 菅松さん: コロナの影響で、家の中で過ごす時間が増えましたが、それが意外といいな、ということを再認識した方が多いのではないかと思います。 僕もその一人で、大勢で飲んだり、みんなでわいわい過ごすのも楽しいですけど、一人で静かに過ごしたり、家族でのんびりしたり、気の合う友達と少人数で飲んだり喋ったりするのも、結構素敵な時間じゃないですか。 そういう時間をさらに盛り上げるものとして品揃えの軸を決めています。 例えばクラフトビールは、それほどたくさん飲まなくても、一人でゆっくり味わえば満足しますし、本も一人で楽しめますよね。 そしてそういう部屋に、木の道具や作品があったらさらに楽しい。 お酒と本と木の3つをもって、豊かな時間を過ごすお手伝いができればいいな、というのが発想のもとです。 木工は北海道在住のクリエイターの作品とBACKWOODのオリジナル商品を販売しています。 ARAMAKI(恵庭) 新巻鮭の木箱をリサイクルし制作を行うクリエイターチーム。独特の赤や黒の文字がインパクト大かつ手に取ると軽く、機能性も抜群です。代表の作家さんは優れた技術を持つ宮大工であり、設計が素晴らしいと菅松さん。 https://aramaki.world/ BACKWOODオリジナル商品 オリジナルデザインをプロの職人が制作。ただそこにあるだけで、空間がちょっと素敵になるような存在感ある品々。上画像は「自在STOOL」。椅子にしたり小物を置いたり、単独でもで重ねても使える5枚1組のスツール。 こちらは「FLAT PLATE」。縁なしで真っ平の珍しいデザインです。食材をのせるとすごく映えるそう。 鹿乃舎木工(伊達) まるで生き物のような、有機的で不思議な形のイス。有珠に工房を構え、古木や北海道産の木材を使用して制作するクリエイターの作品です。 https://shikanoya.theshop.jp/ このほか、豊浦の Horsemade Landscape の器類も取り扱っています。山から木を切り出して、馬に引かせて運び出す「馬搬」という昔ながらの技法に取り組み、素材の調達からこだわって制作されています。 https://horsemadelandscape.com/ 菅松さん: 北海道っていいものがたくさんあるし、作っている方もすごい方ばかり。 職業として作る人はもちろん、「こんなの自分で作るの」と思うようなものを暮らしの中で個人レベルで作っている人が沢山いますよね。 そういう方々に出会って、北海道の人は「手を動かす人たち」だなあ、と思います。 例えば近所のおじいちゃんを見ていても、なんでも自分でやるじゃないですか。 それに対して、都会の人ってなんでもやってもらう側で。 北海道には手を動かしている人が大勢いて、素材も食材も、素晴らしいものが豊富にあって、いいものがいっぱい生み出されている。 それを都会をはじめ、全国の方に向けて発信していければいいな、と思っています。 古本は、「飲む」、「食べる」、「自然」などお酒や木工と親和性の高いジャンルの本がカテゴリー別に並んでいます。開店してみたら予想以上に本が好評で「手元に置いておきたい本からなくなっていく」のだとか。 本の交換コーナーもあり。来店した方が持参したいろいろな本が置かれていました。地域の人の本が集まる楽しいコーナーです。 さて、お店の外に出ると、裏にはこんもりと緑が生い茂る庭が広がっていました。 りんごやなしなどさまざまな果樹が生えているそう。元の家主さんが植えたものだそうで、取材時には丸々とキウイが実っていました。 家や納屋を自分で建て、庭や畑も作っていた元家主さんは、まさに菅松さんが移住して出会った「手を動かす人」のおひとりでした。 その方の手から菅松さんの手へと受け継がれて、古い納屋がお店へと生まれ変わりました。 そうして誕生したBACKWOODの店内にいると、 「暮らしの中で手を動かして、生活に必要なものを作ってきた北海道の人々へのリスペクト」 というような、あたたかく真摯な心意気を感じました。 つくることの素晴らしさと、いいものが放つ輝きに満ちた小さなお店。 北海道の良い品を探しに出掛けてみませんか。 商品はWebサイトでも購入できます。 また、ビールは「角打ち(立ち飲み)」OK。お庭を眺めながら飲んだら、おいしいビールが何倍も味わい深く感じられそうですね。 BACKWOOD 店舗情報 住所 北海道虻田郡洞爺湖町入江265-55 営業時間 木曜〜土曜:13時〜18時、日曜:13時〜17時 HP・ショップ https://backwood.jp/ 記事の内容は取材時の情報に基づいています。取扱商品、メニュー等は変更になることがあります。取材2022年
ch
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