
心の伊達市民 第一号
【St.Alban's church】
東京タワーの近くに聖オルバン教会という名のプロテスタント教会がある。
ウクライナがロシアに侵略されてから、それまでは同じ教会に行っていたウクライナ人はロシア教会に行かなくなった。
礼拝に行く場所が無くなったウクライナ人に手を差し伸べたのが教派は違うが日本聖公会の「St.Alban's church」(聖オルバン教会)で、ウクライナ人の為に毎月・第1、第3日曜日の13時から教会を貸してあげている。
前日にいつものように手帳で翌日の予定を確認したら、2月5日のところに「St.Alban's church」と書き込みがあった。それがX印が付いて、2月12日に延期になっていた。時間は12時15分と書いてあった。
それがまた用事が入り、2月19日に変更になっていた。その頃はその日が「なんだったのか?」が分からなくなっていた。そして「水曜日なので、多分、パイプオルガンの演奏があるはずだ」と思い、12時頃に行ってみた。
場所は東京タワーのすぐ近くで、教会が2軒、並んで建っている手前側の木造の質素な教会である。現地へ行って教会入口右の看板を見たら、「パイプオルガンの演奏は毎月第一水曜日」だけと分かった。
私は水曜日ということだけ覚えていたので、都合で翌々週に延期してしまったのが失敗だった。キリスト教は歴史が長いので色々な宗派があり、私にはよく分からない。
カソリック、プロテスタント、ロシア正教会などは聞いたことがある。
せっかく来たのだからと思い、教会の中に入ってみた。
教会の中は静まり返っていて、聖堂の中ほどに高齢の日本人夫妻が椅子に座っていた。
その内に信者と思われる白人女性が来た。また黒人男性も入って来た。
しばらくすると教会の関係者らしき男が出て来て、牧師が説教をする場所である「講壇」の準備を始めた。もうその頃になると、私だけが勝手に出て行く雰囲気ではなくなった。
その頃になると礼拝に来た人は15人となり、日本人信者と外国人信者は半々くらいだった。最初からいた日本人の女性が私のところに来て、英語で書かれた1枚の紙と薄い冊子を渡した。彼女は何も言わないので私にはなんだか分からないが、どうやら聖書から抜粋したこの日の資料のようだった。
私以外はみんな信者のようで、英語も分かっている人達のようだ。
その後、係の者が講壇の両側にある蠟燭に火を灯した。すると大柄な白人の牧師が奥から出て来た。
私はどうしていいのか分からないので、一番後ろの席で他の人の真似をするしかない。
みんなが立ち上がったので、私も立ち上がった。
次にみんなが座ったと思ったら、そうではなく膝をついたのである。
その時に気が付いた。
前の椅子の下に折り畳み式の「膝乗せ台」があったので、それを引き出した。
そして渡された小冊子を開いて牧師が英語でなにか言うと、続けて信者がなにか言う。
全て英語で行っているし、何ページなのかも分からない。日本語は全く無い。
時々、立ったり肘をついたりして、小冊子に書いてあることを唱和する。
すると突然みんなが立ち上がり中央の通路に並んだので、私もなんだか分からずに続いて並んだ。前に立つ牧師がなにかやっているが、前の人が邪魔でよく見えない。
私の番が来てしまったので、膝をつき両手を前に広げた。
見よう見まねで、これでいいのかどうかも分からない。
牧師が私の手の中にコインくらいの大きさの、薄いウエハースみたいなものを乗せた。
私はそれを口の中に入れた。特に味も無い、ウエハースのようだった。
家に帰ってから、「あれは何か?」と調べてみた。
資料によると『聖体拝領という儀式で、丸い物は「ホスチア」という名前で小麦粉で出来た小さなパンです。イエスは最後の晩餐のとき、パンを「これは私の体である」と言って弟子たちに配り、ワインを「これは私の血である」といって弟子たちに飲ませました。ミサの中でホスチアを信者たちに配っているのは、イエスの最後の晩餐の再現なのです』とあった。
その後、まだ少しミサは続き、例の日本人女性が竹籠を持ってみんなのところを廻り出した。「献金だな」と分かったので、みんなに倣って100円を入れた。
そして間もなくミサは終ったのである。
出口では牧師が立っていて、私に握手をして送り出してくれた。
途中で出るわけにもいかず、仏教徒の私はとんでもない経験をしてしまった。
(おまけの話)
思いがけず聖アルバン教会でミサに参加してしまったので、色々と調べてみた。
するとその聖アルバン教会で、なんと2月24日の天皇誕生日にお祝いの礼拝があると知った。一神教のキリスト教会で神道の「天皇誕生日を祝うとは、なんだろう?」と興味を持った。
礼拝は午前10時からなので、私は信者でもないが10時前に着くように出掛けて行った。
午前8時54分の都バスに乗り、東京駅丸の内南口で東急バスの乗り換えて、教会には10時10分前に着いた。
次々と信者が入って来る。テレビの取材班も来ていた。カメラマンもいた。
信者達も勝手に写真を撮っているので、大丈夫なのだと分かり私もカメラを出した。
白い服の2人の神父が教会に入って来た偉そうな夫婦に欧米風の挨拶し、一番前の席に案内した。私の感では在日ウクライナ大使夫妻ではないかと思う。
私の前に座ったのは2人の男で、片足が無く義足を着けていた。ロシアとの戦争で地雷を踏んだのかもしれない。
間もなく始まったミサは神父が聖書の一節を歌うように読み上げる。それに呼応するように、前の方にいる日本人グループが歌うように続ける。
続いて「講壇」に上がった黒ずくめの神父(司祭かもしれない)が、説教を始めた。
言葉が小さく、なにを言っているのか分からなかった。その内に英語を話しているらしいと分かったが、理解できない。一生懸命に聞いていたら、『私達は・・・』と日本語が聞こえたように感じた。そこで持参している補聴器を出して聞いた。
すると『私達は日本政府と日本の皆様から暖かい援助を頂いた。私達はなにも出来ないが、天皇誕生日を祝い、世界のために、全ての人々のために、平和の祈りを捧げます』というようなことを言っていたようだ。
この日は「献金」もなく、約40分でミサは終った。この日の私は滅多に出来ることではない、貴重な経験をさせてもらった。
北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。
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Rietty
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Rietty
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信仰心(Y)