オジサンは髭が濃いので、初めて行く床屋では注意が必要だ。床屋のオヤジやオバサンが、自分の腕前を示そうと、必要以上に頑張ってしまうからだ。

 床屋のプロたちは、とにかく深剃りの腕を見せたいのだ。ときには「根掘り」とか「根剃り」とか言って、やたら丁寧に時間をかける。その集中力もそうだが、皮膚を引っ張る指の力も大したもので、ピカピカの刃がゴリゴリとあごの下をえぐるような動作には、こちらも緊張してしまう。

 剃り終わった後の、首の疲れは尋常ではない。オヤジの「どうだ~」と言いたげな満足そうな表情は、素敵だが、皮膚の柔らかい首やあごに、点々と血が出るほどで、ヒリヒリする。熱いタオルに小さな赤い水玉模様が転写され、軟膏がすり込まれる。

 申し訳ないが、どうせ翌日には髭はしっかり生えてくるので、そこまでやらなくてもいいのだ。撮影前のモデルや役者ならまだしも、普通のオジサンに挑戦して腕を誇示することもない。

 2度目に行くと、すっかり顔を知られていて「きょうは、時間がないから普通でやるから」などと、言い訳される始末だ。職業的プライドを刺激するのだろう。髭剃りの腕前を調べる調査員に転職したいくらいだ。


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