心の伊達市民 第一号
東京スカイツリーが開業10周年を迎えたそうだ。私はもっと昔のことだと思っていた。
年をとると「時間の過ぎるのが早い」と言われているが、私の場合はそうは感じていない。やはり「どこかが壊れている」のかもしれない。
なにかで見たが、「東京スカイツリー開業10周年記念 特別ライティング・デザイン募集」の結果発表というニュースを見た。募集していることは知らなかった。知っていれば、応募したかった。
ホームページを見ると、優秀作品のライトアップが行なわれていることが分かった。
ライトアップは「夜」と限っているので、撮影するためには夜に出掛けなければならない。我が家の窓からも東京スカイツリーは見えるが、残念ながら頂上部分だけである。
53階のスカイラウンジに行けば全体が見えるが、でも遠過ぎて撮影には向かない。
優秀作品のライトアップは土曜日と日曜日の夜だけである。そこで思い切って、土曜の夜に東京スカイツリーの近くまで出掛けて行ったのである。
東京スカイツリーの足元まで行ってしまうと仰ぎ見る形になるので、全体像が見えない。そこで色々と考えた結果、駒形橋から撮影することにした。
大江戸線で「蔵前駅」で降りて、ブラブラと歩いて駒形橋まで行った。
まだカメラマンらしき人がいないので、駒形橋の下の隅田川テラスに撮影場所を確保した。いつもは吾妻場所から東京スカイツリーを見ているが、その時はスカイツリーはキリンビールのあの変な「う〇こ」のような黄色いオブジェの左側にある。
それが駒形橋という1つ下流の橋に来ただけで、スカイツリーは「う〇こ」の右側になる。まだこの時は午後5時前で、薄暗いだけだ。
テラスでは散歩をする人、ジョギングをする人、犬の散歩をさせる人、熱々のカップルなどが私の前を通り過ぎる。
気が付いたら、東京スカイツリーのライトアップが次々と変化し出した。
これは家に帰ってから調べて分かったが、入選作のライトアップだった。
ホームページでもそのことは書いていないので、テスト照明かもしれない。
午後5時15分になり、やっと「最優秀賞」作品の点灯が始まった。
タイトルは「to the SKY、like a TREE」である。
作者のコメントから一部を抜粋しると、『誕生してから10年で人々の生活に馴染み、いつもの景色の一部になっているスカイツリー。そんなスカイツリーは、いつの日も私達を見守ってくれる「大きな木」のような存在です』とあった。
作品の評価は見る人によって違うと思うが、私の評価は最優秀ではなかった。
午後6時30分からは「パナソニック特別賞」である。タイトルは「十人十色」である。
作者のコメントから一部を抜粋しると、『人はそれぞれ、性格も外見も考え方も生き方も違うからこそ、私達は人と関わり合うのだと思います。多種多様な色が混ざり合ってこそ、単色ではなく明るい鮮やかな世界になると思います』とあった。
隅田川を見ると、時々、明りをいっぱい点けた屋形船が通り過ぎて行く。
駒形橋の照明が隅田川の水面を怪しく照らしている。
「夜のお出掛けもいいなー」と感じた土曜日であった。
最近の私はアートを良く見るが、いつも作者のコメントが難しくて理解出来ないでいる。そんな時に良い言葉に出会った。
それはアート小説の大家である「原田マハ」という人が書いていた言葉である。
『理解するのは後でよい。まずは心の窓を開けてみる』。なるほどー!
でも今回のライトアップのコメントは誰でも分かる。もう少しアートっぽいコメントが欲しかった。
優秀作品の点灯時間は午後9時45分からなので、そんな遅くまで待っていられない。
夜に慣れていない私は「もういい」と思い、急いで切り上げたのである。
(おまけの話)
撮影を終り、家を出る時に『今日の夕食は要らない』と言っておいたので、どこかで食べなければならない。駒形橋の交差点角に「喜多方ラーメン」という大きな看板が見えた。アチコチ探すのも面倒なので、この店に入った。
私の食べた「ワンタン麺」が980円もする時代となっていた。
店を出ると、そう遠くないところに雷門が見えた。折角だからと思い、雷門に向かった。
雷門に近付いてビックリした。午後7時を過ぎているのに、大勢の人出である。
夜は出歩かない私には驚きである。
雷門の大きな提灯の下では、撮影の順番待ちも出ていた。
この時間に人力車に乗っているカップルもいる。
大きなキャリーケースを1人で2つも、それぞれ引っ張って歩いているカップルもいる。
提灯の下を通り過ぎて、仲見世通りに進む。両側の店は全てシャッターが下りている。
外国人観光客もチラホラ見える。みんな浅草寺に向っているらしい。
そんなに信心深そうな若者たちのようには見えないが、土曜の夜を楽しんでいるだけなのかもしれない。
私は途中で引き返し、地下鉄「浅草駅」に向かった。
向こうからはまだまだ大勢の人が雷門に向って歩いて来る。
私の知らない夜の世界がそこにあった。
北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。
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