心の伊達市民 第一号
以前に一戸建ての家に住んでいた時は、年末になると大掃除をしたものである。
私は庭の手入れや窓ガラスを拭くのが担当だった。ところがマンションに越して来たら庭は無いし、窓ガラスは定期的にゴンドラが来て業者が綺麗にしてくれる。
だから私の担当する仕事は無くなったのだが、その代り身を持て余してしまう。
仕方ないので、久し振りにマンションのカラオケルームで、「1人カラオケ」をやってみたら、システムの不具合で部屋のドアが開かなかった。向かいの部屋に来た若者2人も、駄目だった。もう正月休み入ってしまったので、文句の言う係もいない!
最後まで駄目な寅年だった。
そこで家にいては女房の正月料理作りの邪魔になるので、外へ出た。
最初に行ったのが波除神社で、1年間お世話になった「笑福」の正月飾りのお焚き上げをしてもらうことだった。神社は築地市場に隣接しているので、大勢の参拝客が来ていた。
外国人観光客が珍しそうに、神社入口の両側にデンと置かれた獅子頭を背景に記念撮影をしている。この神社は太っ腹で、お焚き上げは特に手続きは不要で、奥の指定場所に置けば良い。
次に築地市場の様子を見に行った。
「見に行く」といっても市場は目の前だから、神社の中から市場の混雑が見えている。
両側に歩道があるが、買い物客と観光客で溢れていて歩けない。
道端には魚などを入れていた、発泡スチロールの白い箱が山積みになっている。
しかし心なしか、以前のような景気の良い大声での呼び込み声は聞こえなかった。
きっと市場組合での取り決めで、「コロナ対策で、大声で呼び込みをするな!」と決っているのだろう。
私はいつものように、テリー伊藤の実家の玉子焼き店で、100円の串刺し玉子焼きを買って食べようと思った。ところが長い行列が出来ている。白人家族も並んでいる。
100円で日本の味を試せるとは、なんと素晴らしい場所なんだろう。
私は買うのを諦めた。
お客は歩道に溢れているので、仕方なく道路を歩く羽目になるが、車と台車に追い立てられる。こんな市場の活気が面白くて、外国人観光客が来るのだろう。
ところで店には「玉子焼き」と書いてあるが、「卵焼き」ではない。
「玉子と卵」の違いがハッキリと分からないので、全農のホームページを開いてみた。
すると「そうだったよなー」という答えがそこにあった。
『卵が孵化して育った生き物が「たまご」です。鳥だけでなく、魚や虫の「たまご」も卵です。一方、二文字の玉子は食用の「たまご」で、鶏の「たまご」が一般的です。また加熱前は「生卵」で、加熱されたものは「玉子焼き」となります。
さすがに分かり易い説明だった。
私はせっかくだから路地に入ろうと思ったが、その混雑は度が過ぎていて入るのを止めた。路地で蠢いているのはほとんどが観光客で、正月用の買い物をする人は少ないように見える。そのせいで普段の日も古くからの店は閉めてしまい、食べ物屋に賃貸して大家になっている。
もう築地は商売人が仕入れに来る場所ではなく、東京を代表する観光地となったのである。欧米人の観光客も多く、自国には無い珍しい光景を楽しんでいる。
そしてアチコチの立ち食い店で、安い食べ物を買って食べている。
(おまけの話)
暮れのTVニュースの中継で、必ず登場するのが上野の「アメ横」である。
ここは本来は市場ではないのだが、いつの間にかお正月用の品物も売るようになった。
「アメ横」は名前の通り「飴屋横丁」で、その代表格の「二木の菓子」は頑張っている。
もう一つの説である「アメリカ横丁」の名前にあるように、戦後はアメリカ軍の放出物資や横流し品が並んでいたが、今は影が薄くなってきている。私は「飴屋横丁」の説を取っている。
築地市場に行ったので、翌日は「アメ横」に様子を見に行った。
やはりここも大変な人出で、歩くのも困難だった。
正月用の生モノや乾物を売る店の前では、店員が大きな声で品物を上に掲げて叫んでいる。『たった2000円だよ!』と言っているが、私はそれが安いのかどうか分からない。
ここでも外国人観光客が多く、アチコチでスマホで写真を撮っている。
中には混雑の中を、1人でスマホをかざし歩きながら話をしている白人女性がいたが、彼女はYOUTUBERなんだろう。私は常々、思っているのだが、YOUTUBERを規制すべきだ。勝手にどこへでも入って行き、歩いている人のプライバシーも関係無く、「面白ければいい!」とばかりにSNSに投稿する。
そして見る人が多ければ、それだけ契約している企業からコマーシャル代をもらうのである。すると当然のように、内容は段々と過激になって行き、嘘か誠か分からなくなってしまう。 若者に「楽して金儲けをするな!」と言いたい。
あまりの混雑で頭が痛くなり、早々に「アメ横」を抜け出して、不忍池に行ってみた。
ここも「やることのジジイ」がかなり来ていて、ブラブラと散歩をしていた。
もう蓮の葉も枯れて、池全体が茶色になっていた。冷たい風が気持ち良い。
思いっ切り深呼吸をした。
そして駅の方に歩いて行き、蕎麦屋があったので年越ソバを食べた。
まだ帰るのには早いので、向かいのカフェに入り本を読んで時間をつぶしたのである。
北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。
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