内館牧子の「老害の人」という本を読んだ。
この本はかなり人気があるようで、私が図書館に申し込んだのは昨年の12月であった。
中央区図書館は普通の本は1冊、少し人気がある本は3冊購入している。

これだと区内3ヶ所の図書館に、1冊ずつ行き渡る。
ところが「老害の人は」、なんと8冊も購入している。
それでも私の順番が来るのに、ほぼ7ヶ月も掛かっている。


「老害の人」★★



私が内館牧子の本を読んだのは4冊目で、1冊目は「こんど生まれたなら」、2冊目は「終った人」、3冊目は「すぐ死ぬんだから」と、後期高齢者のことばかり書いている。今回の「老害の人」は小説仕立てで、老害をまき散らす人達ばかり出て来る。

書いてあることにいちいち納得してしまうのだが、『私はまだ大丈夫』と思いたい。
著者に『それが老害である』と書かれてしまうと、私はどうしていいか分からない。


「老害の人」裏表紙



小説「老害の人」の登場人物は、中小企業の二代目の老夫婦、その会社を引継いだ娘婿夫婦、その息子、老夫婦の娘、農家のオヤジ、老夫婦の女友達などである。

物語は本を読んでもらうとして、書き出しに『老害をバラまくということは、その老人が元気だということだ。人間は年齢とともにできないことが増えて行く。何よりも老害をバラまくことは、本人にとっても「どっこい、生きている」のアピールだ。困ったことに老害の人の多くは、「自分は余人をもって代え難い人間だ」とまだ思っていることだ』とある。


「トラックドライバーにも言わせて」★★



私を含む「老害の人」は過去しかないので、未来を語ることは出来ない。
若者は未熟でも将来があるので、これからのことを語れるのである。
私の学生時代には「老害」という話は無かったように思う。

その頃は「長生きは目出度かった」のだが、いまでは「長生きは老害」となってしまった。この物語は352ページと分厚いので、最後はどんな着地になるんだろうと思いながら、数日を掛けて読み進んだ。


「ハイジが生まれた日」★★



私は老害と言われる前に後継者がいなかったこともあり、会社を閉めて引退した。
いまから考えると「61歳」だったので、少し早過ぎたのかもしれない。
でも経営判断を間違えたり、取引先の担当者の横暴が許せなくなったりした。

そんなことから「潮時」と判断したのは、良かったのかもしれない。
あのまま続けていれば、きっと陰で「老害の人」と言われたに違いないと思う。


「力道山を刺した男」★



しかし「老害の人」と言われては、なんだか「公害」みたいな感じになる。
公害は日本の技術と考え方で、上手く解消できた。
果たして日本の技術で、「老害」を解消できるか?

いま「老害」と言っている若者も、いずれ例外無く年をとって「老害」となり、やがて死ぬ。「後期高齢者」という呼び名も嫌だが、「老害」はもっと嫌だ。
なにか他に良い言葉はないだろうか?


「コーヒーのある暮らし」★



2023年の全国家計構造調査によると、60代以上が個人金融資産の63.5%を、住宅・宅地の58.4%を保有しているそうだ。ここから考えると、高齢者(すなわち老害の人)は個人資産の3分2程度を保有している。その総額は2000兆円にもなると言われている。

「老害の人」が資産の大半を所有しているという、なんだか皮肉のようなデータだ。
「老害、老害」と言っていると、その資産を相続させてもらえなくなるぞ!


「兄弟」★★★



(おまけの話)
マンションの友人のXさんは私より6歳年長だが、少し怒りっぽく老害である。
『そんなことに怒る必要はない』と私が言うと、『息子にも同じことを言われた』と言った。彼は読書が趣味で、手当たり次第に読むのでハズレが多い。

私に『なにか良い方法は無いか?』と聞くので、私は小川榮太郎の「作家の値打ち」という本を勧めた。そして『紙に書いておいたら?』と言ったら、『大丈夫だ』と言った。翌日になり電話があり、『いま本屋にいるが、なんという本だっけ?』と言ったのである。


「作家の値打ち」★★



義兄の「偲ぶ会」の時に姉が言っていた。
『主人は最後の1年くらいは、かなりボケていた。缶入りスープを200缶も買ったり、出掛けた迷子になったり、怒りっぽくなったり、ネットで不要のものを買ったりしていた。亡くなって、ホッとしている』。こういう話を聞くと、私は義兄の肩を持ちたくなる。

私は『でも彼がズーと生活を支えて来たんじゃないの? 最後の1年くらいは、仕方ないよ』と言った。そう言われると図星なので、姉は話題を変えた。老害というのは難しい問題だ。


「ソニーデジカメ戦記」★★



では『自分の「老害度」はどうか?』と考えてみた。
まだ足腰は大丈夫だし、毎日出掛けて昼飯の面倒は掛けていない。生活費も私のお金で賄っている。少し耳が遠くなったが、補聴器も買った。ゴミ出しもしている。洗濯物を畳むのもしている。自分の食べた食器は台所に下げている。現役時代の自慢話もしない。自分では「大した面倒は掛けていない」と思っている。

しかし「老害」の難しさは、「年をとっている」というだけで、かなりの必要条件を満たしてしまっている。男はなるべく早く、しかも女房より先に逝き、喜ばれることしか「老害」から逃げられないと悟ったのである。


 「江戸東京 味の散歩道」★


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北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。

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