心の伊達市民 第一号

ビルヂングか、ビルディングか?


なにで見たかは忘れたが、「ビルヂング」の表示が減って、最近は「ビルディング」になったと書いてあった。そういえば「ビルヂング」と書いてあるのは、大手企業の古い貸しビルに限っていた。

私の年代でも「ビルヂング」と書いてあると、「古いなー」と感じてしまうほど古い。
そこで今回は丸の内を中心に「○○ビルヂング」を探す小さな旅に出た。


建替えられて「ビルヂング」から「ビル」になった「丸の内ビル」



日本で最初の高層ビルヂングは、東京駅前にあった「丸の内ビルヂング」である。
このビルは私が22歳の時にニューヨークに行く時には、日本で一番背の高いビルで9階建てだった。それがニューヨークに行ったら、エンパイアステート・ビルが102階もあり驚いた。

丸ビルは1997年に解体されて2002年に新しく建て直されて、その時に「丸の内ビルディング」と名称を変更し、近代的を装い「ビルヂング」を捨て去った。


 私の行く床屋がある「新有楽町ビルヂング」(1967年・14階)



「ビルヂング」は英語で「building」であるから、これをどう発音するか調べてみた。
すると『「d」は舌の先を前歯のすぐ裏につける。息を止めた状態から、急に息で「ドゥ」と破裂させるように発音する。

「i」は日本語の「エ」と「イ」の中間の音、「エ」と「イ」を同時に言う感じで「イ」と発音する。続けて「ディィ」と発音する』とあった。これでは私には何がなんだか分からない。


「新国際ビルヂング」(1965年・9階)



「ビルディング」か、「ビルヂング」かをネットで調べてみた。
すると『ローマ字読みではビルヂング。特にルールは無いが、有名なところでは三菱地所が所有する高層建築物には「○○ビルヂング」と付けることが多かった。

現在では「ヂ」は訓令式ローマ字では「zi」と表記され、ヘボン式ローマ字では「ji」と表記されるが、昭和22年に訓令式ローマ字が出来る以前に使われていた田中館愛橋が明治16年に考案した「日本式ローマ字」では、「ヂ」を「di」と表記した』とある。


 「有楽町ビルヂング」(1966年・11階)



これでも良く分からないので、日本語の分かるアメリカ人に聞いてみた。
すると英語の発音に近いのは「ビルヂング」ではなく、「ビルディング」だと言った。
それより『変な日本語英語を正した方が良い』と言われた。

パソコンで日本語の文章を書く時に、buildingだから「birudingu」と「di」を押せば「ヂ」が出て来る。「ディ」にしたい場合は「de+X+i」を押す。「ジ」は「ji」を押す。または「zi]でも出る。
これにはなにか「法則があるに違いない」と感じたので、その話は「おまけの話」に譲って、「ビルヂング」を探して大手町、丸の内、有楽町を彷徨った。


 「有楽町電気ビルヂング」(1979年・20階)



先ずは有楽町の皇居側を歩いてみた。以前から知っていた「有楽町電気ビルヂング」で写真を撮った。隣には嬉しいことに「有楽町ビルヂング」があった。その少し先には私の贔屓の床屋が入っている「新有楽町ビルヂング」がある。その裏手の方には、また嬉しいことに「新国際ビルヂング」がある。「新」と名乗っているが、1965年の竣工である。

もうこの辺りには「ビルヂング」が無さそうなので、大手町方面に行くことにした。
色々と見て廻って気が付いたが、「ビルヂング」を名乗っているのは、『古い、低い、大きい』が条件のようだった。


 いまもシッカリと「大手町ビルヂング」(1958年・9階)



大手町は新しいビルが多く、なかなか「ビルヂング」が見付からない。
事前に調べておいた「大手町ビルヂング」に行ってみた。
ここは「ビルヂング」と名乗るだけあって、1958年の竣工である。
大手町の一等地に位置していて、9階建てで巨大で威風堂々のビルである。

この辺りは一等地だけあって高層ビルばかりで、「ビルジング」はもう無さそうだった。だが現在も「ビルヂング」を名乗っている建物も、遠からず「ビルディング」に建て替えられてしまうのだろう。


「大手町ビルヂング」の中央通路



(おまけの話)
カタカナの「ヂ」と「ジ」はどう違うのだろう?
発音も同じではないかと思う。私の考える違いは「漢字」にあると思った。
「ち」という漢字を調べてみた。すると「血、地、知、遅、知、痴、千、智、値、治、致、稚、乳、置、弛、・・・」など無数にある。

この中で熟語で「ぢ」を使うのは2つあると、私は思った。
「血(ち)」を「ぢ」と詠むのは「鼻血」、「地(ち)」は「地面」、「地元」などがある。「はなじ」で検索すると「花時」が出る。「はなぢ」で検索したら「鼻血」が出た。 


 銀座を代表するレトロビル「奥野ビル」(1932年・7階)



次に「ぢめん」で検索したら「ヂ面」と出た。「じめん」では「地面」が出た。
「エー!」と思った。私の推察は違うようだ。
納得出来ないので本格的に調べてみたら、以下のことが分かった。
1988年7月1日の内閣告知第一号「現代仮名遣い」で、下記のように決められていたのである。

(1)「ぢ」、「づ」は原則的に使わない。
(2)同音が続いた場合は例外。
(3)連濁の場合は例外。
(4)2語に分解すると意味が連想しにくいものは、どちらでもよい。
(5)漢字の読み方がもともと濁っているものは、そのまま。


入口ドアを手で開けて入ると・・・(奥野ビル)



(2)の「同音が続いた場合」というのは、「縮む・ちぢむ」、「続く・つづく」などである。
(3)の連濁とは2つの語で1つの語になるもので、「鼻血」、「身近・みぢか」などがある。
(4)分解すると意味不明なものは「稲妻・いまづま」などがある。
  (注)「人妻」は分解しても意味が分かるので、「ひとづま」となる。

(5)「地」、「図」などはもともと「じ」、「ず」などになっているから変化しない。
「ビルヂング」から始まった話が、思わぬ結論となって勉強になった。


 ドアを手動で開けるエレベーターは懐かしい(奥野ビル)

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コメント

  1. Shinji

    Shinji

    返信

    金田一京助なみの研究レポート、大変おもしろく拝読させていただきました。いつも疑問に思っていたテーマです。

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北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。

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