ある日、友人が僕に紹介したい人がいると言ってきた。
僕は知らない人に会うのが苦手だ。
自分では対人恐怖症的な要素があるとも思っている。
だからこの時も気が進まなかったが、友人がどうしてもというので会うことにした。

札幌の街中の喫茶店の前で我々は顔を合わせた。

友人と一緒に来たのは恰幅のいい、僕らよりも少し上の感じのちょい悪オヤジ風の胡散臭いオッサン。髪は長髪で茶色に染めていた。



軽く挨拶すると名刺を渡された。
そこには「ミュージシャン」と書いてあった。
僕は名刺を見て座りながら「なるほど。いかにもだな」と納得した。
友人は店の人にホット3つね、とオーダーをした。
店内は我々以外に2組しかいなかった。

「なんの楽器やるんすか?」と僕はオッサンに聞いた。

すると友人が「この人、プロのサックス奏者なんだ。今、俺教えてもらってるんだ」
と説明してくれた。

僕は「へー・・・レッスンプロね」と思ったが、どうして友人がこの人を紹介したがっているのかがわからず、ちょっと訝しげにしていたところ、友人がおもむろに口を開いた。

「この人、宇宙人なんだって」

え? 

冗談をかませてきたんだなと一瞬笑顔を友人に返したが、二人ともマジな顔つきで僕のことを見ていた。

僕は事態をよく把握できずに問いかけした。

「えっと……宇宙人って……」

するとそのオッサンが話を始めた。

「実は僕もビックリしたんすよ」

「おいおい。このオッサン、マジかよ。ビックリするのはこっちだろ」と僕は思ったが、相手が真剣な顔で語りかけてくるから、こちらもマジな顔で応対した。

「あの。ど、、、どういうことすかね?」

その時、オーダーしていたホットコーヒーをウェイターが持ってきた。
「お待たせしました。ホットコーヒーです」
カップを机に置く音が、しばしの沈黙を作った。


(つづく)次回4/4予定


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豊浦町でワンコたちと暮らし、たまに海で遊ぶ日常をつづります。

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