kayaker
今年の8月後半の話。
あっという間に終わってしまった夏だったが、
夏休みをとって
久しぶりに山口県の旧友に会いに行った。
僕の数少ない親友のひとりである。
彼とは大学時代の4年間、
学部こそ違ったが、
サークルが一緒だったこともあり、
ほとんど大学の授業を
受けずにブラブラしていた僕は
その4年間を彼と連れ合いのように一緒に過ごしたのだ。
サークル活動が終わってからも
彼の下宿に寝泊まりして麻雀をしたり、
僕の実家で一緒に飲んだくれたり、
外に飲みに行くのもいつも一緒だった。
それでもちろん、彼の山口県の実家にも夏休みは
遊びに行ったりしていたから、365日中、350日くらいは
顔を合わせていた。
僕がカミさんとアメリカで結婚式をする際にも
田舎から駆けつけてくれたくらいだ。
でも、卒業をしてから僕たちは、
5年から10年に1回くらいおきにしか会えなかった。
お互いに忙しかったし、
山口県で教職員として就職した彼とは
東京にいた僕もなかなか簡単に会えなかったのである。
その後、30年。
彼は教師を辞めて塾を開設したり、
町議になったりしたが、
結局義兄の経営する会社に入って社長である義兄を
サポートするサラリーマンになった。
それから久しくして、
彼は網膜剥離になり、片目はほとんど視力がなくなった。
その上、もう片方の目も緑内障を患ったかで
もうほとんど視野がなくなり、
今では自分一人で歩行するのもやっととなっている状態になった。
そんな彼ではあるが、
時々会ったり、電話で話をしても
昔と同じように馬鹿話をしては
身の上に起こった悲劇に対して
ほんのわずかな悲壮感もみせずに接してくれる。
こいつはそんなやつなのだ。
しかし、この春先であったか、
久しぶりに電話がかかってきたと思ったら
目はほとんど見えない上に
今度はパーキンソン症候群の疑いが出てきた
と言ってきた。
つくづく大変な目に遭うやつなのだなと
さすがに憐れむしかなかったのだが、
今回、いつもの様子と違ったのは、
「鬱になったみたいだ」と言ってきたことだった。
いつもは見せてこなかった本気の弱気に
僕は居ても立っても居られない思いに駆られ、
これは励ましに会いに行かねばと思った。
そうして今回の機会となった。
ただ、どうせあっちの方に行くのであればと、
今回はカミさんの還暦祝いをかねて、カミさんも一緒に
以前から行ってみたかった出雲大社にも立ち寄ることにした。
つづく
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