心の伊達市民 第一号

鬼平犯科帳の地を行く(1) 

なにかの雑誌で「池波正太郎」のことを読んだ。
そこで彼に縁のある墨田区で、「ゆかりの地」を訪ねてみようと思い立った。

先ずは両国駅前の観光案内所に行ってみた。
そこには私の希望するような内容のパンフレットが用意されていた。
「私と似たようなことを考える人は、大勢いるんだなー」と思った。



墨田区観光協会で用意されていた「鬼平コース」のパンフレット。


「鬼平犯科帳」を調べてみたら、全部で(24巻+番外編)で25巻もあるようだ。
これだけあると、「ゆかりの地」もたくさんあるはずだ。
私は2~3巻しか読んでいないし、内容もほとんど覚えていない。
だから「ゆかりの地」といっても大して感慨もないが、散歩には良いテーマだと思った。



「鼠小僧次郎吉」の墓(回向院)


観光案内所でもらったパンフレットには小説に登場した店、場所、寺などが地図に書き込まれていた。
先ずは両国駅の南、約500メートル位のところにある回向院である。

回向院は以前に何度も来ているから、迷わないで行ける。
この寺は小説では「参道の雑踏に紛れた盗人を捕えるべく、鬼平の活躍の場」になっていた。
しかし小説で実際の歴史ではないから、特に何も無い。



「両国橋広小路跡」と料亭「井筒」は立て札だけ。


有名なのは「鼠小僧の墓」があることである。
鼠小僧は実在の人物で、生涯に99軒の侵入を果たし、最後は捕まり市中引き回しの上、磔となり首は晒された。そして頭部が回向院に葬られているのである。
ところが鼠小僧のファン(特に受験生)が「スルリと入る」という縁起を担いで墓石を削って持って帰るために、寺では仕方なく墓の前に削り用の「お前立ち」を置いている。

もう1つ不名誉で有名な話は、赤穂浪士の四十七士が討ち入り後、休憩の為に回向院で休ませてもらおうとしたら、断られたのである。そしてその先の永代橋の袂にあった「乳熊屋」という味噌屋で甘酒を振る舞われたのである。



煙草屋「壺屋」と軍鶏なべ屋「五鉄」は立て札だけ。


回向院を出て、旧両国橋と広小路跡に行ったが、どちらも立て札があるだけで終りだ。
広小路跡は現在も細い路地があり、地元の人だけが利用するようだ。
次に煙草屋「壺屋」に向かう。
この辺りは昔の面影はほとんど無く、小さなマンションばかりが建っている。



茶屋「笹や」は立て札だけ。


「壺屋」を探すのには、かなり時間を要した。
地図を頼りに何度も同じ道を通ったのだが、見付からない。
諦めようとして振り返ったら、マンションの入口の横の壁に立て札があった。

次は鬼平の行き付けの「軍鶏なべ屋」の「五鉄」であるが、実在していたのではなく、小説を書く上での架空の店なので、場所は「この辺だろう」と観光協会の人が決めたのだろう。



「弥勒寺(みろくじ)」は普通のお寺だった。


その先の茶店「笹や」も立て札だけだった。
通りを渡り、少し行ったところに「弥勒寺」があった。ここは実在である。
小説では「寺の下男の茂平は、お熊とは茶飲み友達である。茶店「笹や」が門前にあるので、しばしば弥勒寺が登場する。

約2時間弱で7ヵ所を歩いて廻ったが、途中でいくつもの歴史上の史跡に出会った。
架空の場所で立て札を見るだけより、歴史上の実在の場所で昔を偲ぶ方が良いと分った。
帰りに両国駅に出たら、大相撲9月場所の幟が盛大にはためいていた。



両国の国技館は「九月場所」の最中だった。


(おまけの話)
「鬼平犯科帳」の作者の池波正太郎はグルメでも有名で、多数のグルメ本を書いている。
今回はその中から、割合に知られている数軒を取り出してみた。

「たいめいけん」の「オムライス」、「資生堂パーラー」の「チキンライス」、「前川」の「うなぎ」、神田「まつや」の「太打蕎麦」、神田「竹むら」の「栗ぜんざい」。
この中で私が食べたことが無いものは、神田「竹むら」の「粟ぜんざい」であった。



蕎麦屋の「まつや」は午前11時から行列が出来ていた。


この「粟ぜんざい」は粟の季節だけのもののようなので、今がその時期だと思い、早速行ってみた。
場所は日本蕎麦で有名な「やぶそば」の近くで、蕎麦屋の「まつや」も近い。
この近くは美味しい食べ物屋がある界隈であるが、1回には1軒しか行けないのが残念だ。

池波正太郎は次のように書いている。
『酒後に粟ぜんざいを口にするのは、なかなかよい。酒後の甘味は躰に毒だというが、酒飲みには、この甘味がたまらないのだ』。



名物「粟ぜんざい」の「竹むら」の建物が素晴らしい。


私は神田淡路町の「まつや」に行ったら、午前11時から行列が出来ていた。
ここの蕎麦は今は細切りで私の好みではないが、「もり蕎麦」(770円)を食べた。
その足ですぐ近くの、甘味処の「竹むら」に向かった。

11時40分に店に入ったら、さすがにこの時間から甘味を食べる人はいなくて私1人だった。
名物の「粟ぜんざい」は私の好みでないので、「御前しるこ」を食べた。
「しるこ」より、この店の建物が素晴らしい。いつまでも残って欲しい時代の証人である。



「竹むら」の「御前しるこ」(800円)

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北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。

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