心の伊達市民 第一号

開かずの金庫  

テレビのバラエティ番組で、時々、「開かずの金庫を開ける」という場面を見ることがある。
古い格式のありそうな家とか、伝統のある会社の倉庫にある金庫などが登場する。
そこに鍵の専門家が出て来て、古い時代の頑丈な金庫を何時間も掛けて開けるのである。


簡単に開けてしまったり、「開かないまま」では番組にならないから、適度な演出はあるだろうと思う。
でも面白いので、つい最後まで見てしまう。





「金庫と鍵の博物館」(杉山金庫)


そんな番組を見た後に、日本経済新聞の最終ページに「金庫と鍵の博物館」という記事が出ていた。
この博物館のオーナーの本業は「杉山金庫」という金庫と鍵の専門店で、土曜・日曜だけ無料で公開していると知り私は予約の電話をした。「金庫と鍵の博物館」は大江戸線「森下駅」近くで、歩いても数分の奥まった場所にあった。


インターフォンを押し、出て来た主人に先導されて自宅の玄関から入る。
靴を脱いで床に上がると右が仕事場で、博物館らしさは感じられない。
40平米くらいの部屋は、事務所と作業場と博物館を兼ねている。





「鍵のギザギザ」を作る機械。


早速、この会社の3代目の主人が金庫の説明を始めた。
置いてある金庫は2つで、その他に小さな家庭用の金庫も見える。
一番大きな金庫が今回の目玉のようで、親切に説明が始まった。
この金庫は昭和12年の製造で、日本軍が暗号書を保管するための金庫で重量は400キロだそうだ。


新聞で「日本でたった1台」と紹介したら、ある人から「私も持っている」と連絡があったそうだ。
だから今は『日本で2台だけ』と説明しているとのことだった。





右側が旧日本軍の暗号書保管金庫


金庫の表面には3種類の錠がある。
ダイヤル錠、シリンダー錠、そしてもう1つがこの金庫の売り物で、機械式プッシュボタン錠だった。
ダイヤル錠とシリンダー錠は既に開けてあるので、機械式プッシュ錠の説明となった。


縦5個、横10個の50個のボタンが配列されていて、その中から5個を選んで押すと開くという。
押す順番はなんでもよいが、そもそも管理者以外は「5個押す」というのは分からない。





特殊な50個の押しボタン鍵


50個のボタンから正確に5個を押すためには、200万通りの中から見つけなければならないそうだ。
これはもう不可能に近い。5個のボタンを押してハンドルを廻すと、表面の扉が開いた。


中には鉄の扉があり、そこにまたシリンダー錠が付いている。
それを開けると桐の扉があり、扉を開けると引き出しがあり、そこに暗号書が入っていたそうだ。
なんだか凄い金庫だが、更に他の金庫には無い凄い機能があった。





表扉の裏側カバーを外して、中を見せてもらった。


最初の扉を開けた裏側に小窓があり、そこを覗くと円盤に刻まれた数字が見える。
これが重要な機能で、扉を開ける度に数字が進む。
それにより管理者の知らない間に扉が開けられていたら、数字は閉めた時より2つ進んでいる。


だからその場合は「暗号書が見られた」と判断して、暗号を変えるのだそうだ。
やはり軍隊の金庫は機密保持のために、民間では思いもよらない仕掛けになっていた。





扉を1回開けると、ダイヤルが1つ進む仕掛け


テレビの「金庫開け」の話題になったら、主人は番組にとても批判的だった。
金庫の開け方を悪用されることを恐れている、とても真面目な人だった。
話は飛躍して私に興味を持って、色々と聞くので長話になってしまった。


ここも跡継ぎ問題があるようで、自分の代で終らせたくない気持ちは良く分かる。
でも息子には息子の人生がある。私のアドバイスが少しでもお役に立てれば幸いである。
金庫見学が思い掛けない方向に行ってしまった「金庫と鍵の博物館」だった。





2つ目の扉を開けると、桐の箱が現れる。


(おまけの話)
この日は午後1時過ぎに北海道から東京に、私の友人(Yさん)が来ることになっていた。
私が18年前から伊達市に夏の間だけ女房と滞在するようになり、伊達市の友人を通じて知り合った友人だ。


彼は元は東京人で、伊達市に移住したという毛色の変わった男だった。
しかし元東京人ということで気が合い、彼の経営しているネット企業「アップデート」のブログに投稿するようになったのだから、人の縁とは不思議なものだ。





東京駅前では修学旅行生が集合写真を撮っていた。


「すっかり田舎者になっている」と本人の言う彼の為に、迷わないで済むように到着に合わせて東京駅近くのカフェ「スターバックス」で落ち合うことにした。札幌からの飛行機の遅れで、Yさんが現れたのは予定より1時間近く後だった。


Yさんは都会の風景に溶け込んでいて、全く「田舎者」には見えなかった。
前回の再会から5~6年ぶりだったが、メールの送受信があるのでそんな以前のこととは思えなかった。
手紙と違い「メールは時空を越える」と、その時に感じたのである。





KITTEの全景(後ろの高層ビルもKITTE)


Yさんは両親に会うための上京だったが、わざわざ私と会う機会を設けてくれたのは嬉しい。
この年になると、人と会い、話が出来るのは幸せに感じるようになる。
家族のこと、仕事のこと、友人達のこと、将来のこと、話はアチコチに飛び、1時間半はアッという間に過ぎて行った。


どうでもいい話だが、「スターバックスは札幌に行かないと無い」という話題がとても新鮮に感じた。
Yさんも久し振りの東京で、「人の多さに疲れたのではないか?」と心配だ。





スターバックスで待ち合わせ。

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北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。

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