本屋で働いていた時は、無意識にスキップするくらい何だか楽しかった。
何より雇われているだけで、店長のように責任がないことが、気持ちを軽くさせていた。

レジ打ちでおつりを間違えることもなくなり、
慣れてくるとレジが花形のポジションに思えてくる。
持ち時間が決められていて、自分の番が回ってきたらレジに立ち、
レジに立つと何か誇らしい気持ちになった。

そんな誇らしいレジでもいろんなことがあった。

ひとつは、年配のお客様が、レジに高そうな本を持ってきた。
その方は「このページをコピーしてくれないか」と言った。
そんなサービス、いつから始めたのだろうと思い、
隣のレジの同僚に目で確認すると、頭を横に振っている。

そうだよね、売り物をコピーできるはずないよねと思い直し、
「当店は本を販売しておりまして、コピーは承ることができません。
申し訳ありません。」と言って、お帰り頂いた。
心の中では「ここは図書館じゃないんだけどなあ」
と言っている自分もいたが、お客様第一なので、丁寧に対応した。

もうひとつは、絶対この小さな街では売れないと思っていた本が売れた。
それは男性向けの「薔薇」の付く雑誌だった。
カッコいい細身のスーツのイケメンが、その「薔薇」を持ってきた。
レジで受け取って「あっ」と声が漏れそうになるのを抑えながら、
凄い表紙を下にして袋に入れ、代金と引き換えにお渡しした。

いろんな人が来るんだなあと、改めてこの仕事の奥深さを知った。



この町に思うこと こくぼ重孝

アクセス総数:9,878

25年前、東京からこの北海道伊達市に移住した。都会であくせくして生きてきた自分にとって、この街は楽園のようだった。そんな楽園も暮らしていくといろんなことがあった。徒然なる街ではなく、変化があり退屈しない街に住んで感じたことを600字に絞って綴っていこうと思う。

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